今年6月に富士通の新社長に就いた時田隆仁氏は、就任直後に社内の服装規定を撤廃するなど、「伝統的なITベンダー」というイメージの払拭に腐心している。9月には、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援を専業とする新会社の設立方針を発表。IT企業からDX企業への生まれ変わりを自身の使命とした。巨大な既存のIT事業と、今後の成長分野に位置付けるデジタル領域を、どのように伸ばしていくのか。
責任をプログラミングされた会社が
顧客のDXを推進する
――富士通トップの方がノーネクタイでこのコーナーに登場するのは初めてではないでしょうか。“ドレスコード廃止”の反響はいかがですか。
社員に向けた社長メッセージを発信する社内サイトがあり、「いいね」ボタンをつけているのですが、ドレスコードの件に対しては、世界中の社員から過去最多のいいねが寄せられました。10月1日以降、ネクタイをしている社員はあまり見なくなりましたし、他社でも同じような動きがあるというニュースが聞こえるようになりましたので、業界に一石を投じたという意味はあったのかなと。社長としては、もっと実ビジネスに近い話題で大きな反響をもらいたいので、複雑な心境ですが……それだけ、私たちがトラディショナルな会社だと思われていたということでしょうね。
――まさにそのトラディショナルなIT企業から、DX企業に変わっていくんだ、という経営方針を発表されました。以前から、今後はDX支援で成長していくという考え方はあったと思いますが、これからどう変わるのですか。
富士通が自らの存在意義を問い直して、目標・目的を明確に定義し、内外に向けて宣言したということです。今までの延長線上でDXをやるのではなく、もっと高いところを目指すんだと。そして、お客様のDXを支援することがビジネスの中心になるのに加えて、われわれ富士通の中のDXを推進するということもきちんと宣言したということです。
――近年、デジタル変革を牽引するような技術の担い手は、日本の大手企業ではなく、GAFAと呼ばれるような海外のプラットフォーマーや、スタートアップ企業に移っているように見えます。何を強みに戦っていきますか。
テクノロジーで競合に劣っているとは考えていませんが、変革をどう提案し、進めていくのか、その先でどのようにして広がりのあるビジネスを作っていくるのかということに対して、これまでは十分にできていなかったと思います。しかし、お客様と共にDXをきちんと実行し、お客様自身が社会の一員として信頼に足るビジネスをやっていくためのインフラ、サービスを、持続的に提供できるかという観点で見ると、われわれに優位性があるはずです。ずっとお客様のビジネスを支えてきた実績もあるし、お客様から得た知見もある。確かにトラディショナルな会社ではありますが、相応の社会的責任を内部に完全に“プログラミングされた”会社であるということこそが、アドバンテージだと思います。責任感をもつということは、言ってすぐ身につくものではありませんから。
――IT企業からDX企業へと舵を切るならば、顧客のIT部門から業務を受託する従来型の事業は、むしろ縮小が前提の計画でもよかったのではないでしょうか。
十数年前から、いろいろな調査レポートで「従来型のSIビジネスは縮小する」と言われていましたが、今のところ、現実にはまったく当たっていません。個別の製品やサービスが淘汰されることはあっても、少なくとも当社がお付き合いしているエンタープライズのお客様の間で、従来のITサービスのニーズが減ることは想定できません。
一方で、「2025年の崖」といったことが公に言われるようになり、多くのお客様の間で、従来型の投資だけではいけないという機運、危機感が根付き始めました。新しい領域を成長させると同時に、従来の部分も強固な顧客基盤をベースに伸ばしていくことは、十分可能と考えています。
――来年以降デジタル領域の中核となるDX新会社は、3年目に2000人体制とする計画です。営業、SE、コンサルタントなど、それぞれ何人くらいの部隊になる見込みですか。
私たちが目指すデジタル領域では、営業やSEといった機能が明確には分離していないのではないかと思っています。今、一般的に通っている名前で言えば、新会社の人員のほとんどは「コンサルタント」ということになりますが、提案・企画部分だけ提供するようなサービスは、お客様も望んでいないと思います。あるときはコンサルをするし、あるときは手を動かしてシステムも作る、そんな部隊にしていかないと、この領域では強みを発揮できないと考えています。
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