デジタルトランスフォーメーション(DX)の広がりに伴い、企業のデータ活用は進みつつある。日本テラデータは2018年から、DWHやビッグデータ分析基盤など、それまで個別の製品で提供していた機能を統合し、一括してデータの管理や分析ができるデータ・アナリティクス基盤ソフトウェア「Teradata Vantage」を提供。高まるデータ活用のニーズに合わせてビジネスモデルを変化させてきた。今後、企業内のデータはさらに増えていく見通しで、「アナリティクスの市場は明るい」と見る高橋倫二社長に、ビジネスの現在地や今後の戦略を聞いた。
日本企業の意識に変化
――17年9月の社長就任からもうすぐ丸3年となります。データ分析、アナリティクスはDXに欠かせない要素と言えますが、関連製品も市場に溢れています。日本テラデータの経営にあたって高橋社長はどんなことを重視してこられたのでしょうか。
データがいろいろある中で、単にグラフを作るだけでは意味がありません。データを使うことで、何かの判断につなげていくことが非常に重要です。社長に就任してからは、アナリティクスでどのようにお客様の判断のお役に立てるか、あるいはお客様をどのようにサポートできるかということを常に考えながらビジネスを展開してきました。
――直近のビジネスの状況はいかがでしょうか。
2年以上前から、売り切り型からサブスクリプション型のビジネスへの転換に取り組んできました。現在は、ほぼ100%のお客様にサブスクリプションで利用していただいているので、経営の安定化につながりました。具体的な数字は申し上げられませんが、18年と19年は好調で、今年も今のところ堅調に推移しています。新型コロナウイルスの感染拡大によって、大きなプロジェクトの遅延といった影響は出ていますが、企業の間ではデジタル化推進の機運がさらに高まっているので、今後も今の勢いを維持していきたいと思っています。
――アナリティクスに対する日本企業の意識について、どのようにお考えですか。
DXという言葉が浸透し、アナリティクスに対する意識は大きく変わってきていると実感しています。社長に就任した頃は「データを使って何ができるか考えたい」という漠然としたお話が多かったです。最近は「データを分析して前向きに攻めていきたい」という具体的なお話が増えています。お客様の中には、データに関する責任者を置き、アナリティクスに焦点を当てている企業が増えています。
例えば金融業界では、一人一人のお客様のカスタマーエクスペリエンス(CX)を向上させたいという希望があります。仕事や家族の情報も含めて個人データを詳細に分析して、それぞれの人生のステージ、お子さんの成長に合わせた金融商品をお勧めするなどして、CXの向上を図ろうという動きが出てきています。流通業界でも個人データやSNSのデータを分析して、CXを向上させていくのは当然という考え方が一般的になりつつあります。多くの業界で総じてデータの重要性がより認識されているため、アナリティクスの市場は明るいと思っています。
――DXの観点で他国の企業と比較した場合、日本企業の特徴はありますか。
最近、日本や米国、英国、フランス、ドイツ、中国の270社からアンケートを取りました。ほぼ全ての企業がDXに取り組んでいると回答していましたが、DXが完了しているかという質問については、イエスと答えた日本企業はありませんでした。ほかの国の企業に比べてデジタル化が進んでいるとはいえない状況が浮き彫りになりました。ただ、日本企業はユーザーエクスペリエンス(UX)向上のためにDXに取り組んでいるという回答が他国に比べて多く、非常に前向きに市場を開拓しようとしています。
UXを向上させるためには、ユーザーの嗜好や購買行動を継続的に分析し、企業の製品やサービスの改善にフィードバックし、ビジネスを改善し続けることが大切です。これこそが、DXです。ビジネスで成果を上げるためには、増え続ける膨大なデータをリアルタイムに分析し、インサイトを見つけ出さなければなりませんが、多くの企業ではデータ分析を行う基盤作りや、分析を行いインサイトを得る取り組みに課題を持っています。主力製品であるTeradata Vantageは、そうした企業のニーズに応えることができる唯一のプラットフォームであり、データ分析基盤構築のほか、運用を支援するコンサルティングサービスも併せて、テラデータへの需要は今後も伸び続けると考えています。
リアルタイムの判断につながる
――米テラデータ・コーポレーションは、今年で創業41年となりました。グローバル全体でこれまでに培った知見は、日本でのビジネスにどのように生かされていますか。
現在、グローバルで1000以上のユースケースがあります。お客様に対してどのようなアナリティクスが必要かという質問をすると、各企業の状況は異なるので、お客様が的確に回答することは難しいのが現状です。そこで、弊社がユースケースをお示しすることで、課題解決のヒントを提供することができます。これは、他社にはないわれわれの強みだと思っています。
――Teradata Vantageの強みや顧客に選ばれるポイントについて教えてください。
データを分析する上では、音声や画像などを含め、いろいろなデータを組み合わせることで、結果を出すことができます。そういった点で考えると、Teradata Vantageは、あらゆるデータに一元的にアクセスできるため、データを組み合わせた分析に最適です。また、エンタープライズレベルのデータ分析に耐えられるスケーラビリティを備えていることも強みです。最近では、オンプレミスに加え、クラウド戦略にも力を入れているので、ハイブリッド環境にも柔軟に対応できるようになっています。これまでは、データをいったんコピーして分析する手法が一般的でしたが、今はコピーした瞬間に古いデータになり、ストレージの容量も無駄になってしまいます。Teradata Vantageを使うことで、お客様にとっては、システム環境の違いのほか、データの形や量に違いがあったとしても、リアルタイムに分析して課題解決の判断につなげていくことができます。
――顧客の業種や規模に特徴はありますか。
現在は、金融や保険のお客様が非常に多く、自動車を中心とした製造業のお客様も目立っています。アナリティクスの領域に業種の壁はありませんので、幅広い業種のお客様に使っていただくことが可能です。お客様の規模は、エンタープライズクラスが圧倒的に多い状況ですが、今後はビジネスパートナーとともに市場を広げ、中堅・中小企業にもどんどん提案していくことを計画しています。
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