NECは11月30日、森田隆之・副社長兼CFOが来年4月1日付で社長兼CEOに就任し、新野隆社長兼CEOは代表権のある副会長に就くと発表した。今年度を最終年度とする中期経営計画で最優先の目標として掲げた営業利益率5%の達成など、新野社長が進めてきた構造改革と収益改善で一定の手応えを得たことが決断を後押しした。任期を3カ月ほど残すものの、新野社長は自身の在任期間をどう総括し、何を次代に託すのか。
本当にやりたかったのは
「カルチャーの変革」
――社長交代発表から2日経ちました(インタビューは12月2日)。やはり少しホッとされたところがあるんでしょうか。
どうでしょうか(笑)。ただ、社長職というのは思っていた以上に重い責任がありましたね。
――社長交代の経緯を改めてうかがいます。
社長就任当初は相当悪い状態で、どうやって立て直せばいいか、本当にいろいろ考えました。2018年度からの中計で少しずつやりたいと思っていたことが実現しつつある中で、今年度最終年度を迎えたわけです。もともと私の中では、今の中計が一つの区切りだとは思っていました。一方で、仮にコロナの影響も含めて今年度の業績が全くダメだというなら、さすがに社長職を放り投げるわけにはいかないという思いもありました。上期の数字は結構厳しかったですが、9月くらいからだいぶ上向きになって、なんとか目標を達成できる可能性は高いという状況になりました。
それと、来年度からの次期中計は、まさにニューノーマルの中でNECがどう変わってどう成長していくのか、社会やお客様にどう貢献していくのかという方針を示す、当社にとって非常に大事なものです。新しい経営体制でやりきるべきじゃないかということで、決断しました。
――新野さんは代表取締役副会長に就かれます。
これからも激しい変化が起こる中で、新社長に「よろしくね」と丸投げするだけではマズイとも思っていて。社長には相当な負荷がかかりますので、あくまでもそれを支えるということです。要らないと言われればいつでも辞めます(笑)。
――20年は非常に大きな社会の変化が起きた年でしたが、新型コロナ禍がもたらした影響をあらためて振り返っていただけますでしょうか。
NEC自身のビジネスということでは、リモートワークへの対応も含めて事業継続に対してほとんど影響はありませんでした。
ただ、この1年で私が本当に実感したのは、日本全体のデジタル化の遅れがここまでひどいのかということです。ITを担う会社として、NECの責任もすごく大きいと思っています。デジタル庁が設立されて、国の方針、やり方も大きく変わっていくでしょう。その中で、ビジネスチャンスというのはもちろんあるんだけれども、われわれの責務・責任をしっかり果たさなければいけないという思いを非常に強くしました。
――確かに、特に公共分野の制度、システムともにアップデートされていないという課題は目立ちましたよね。まさにNECが主戦場としてきた領域でもあります。
例えばマイナンバーの仕組み一つとっても、従来は国民の意思によってプライバシー保護に寄った形になっていたのが、プライバシーと利便性のバランスを再考すべきではないかという流れに変わってきています。これは日本が変わるチャンスだと思うんですよね。
霞が関もこれまで完全に縦割りで、IT戦略室こそありましたが、最終的に予算を持って執行責任を持たないとうまくいかないという課題が浮き彫りになった。霞が関のやり方も変わっていくでしょうし、連動して地方自治体の仕組みも変わっていくでしょう。新しい日本のインフラを早期に整備する契機とすべきだと思いますし、そこにわれわれがやってきたことを生かさないといけない。
――在職期間中の成果についてはどう整理されていますか。
私が本当にやりたかったことは、NECのカルチャーを変えることです。大企業病で内向きな仕事は多いし、忖度も当然あるし、ちょっと前まではハンコもたくさんあったし、いろいろな意味で遅れたカルチャーだったと思います。NECにはすごく優秀な人がたくさんいて、素晴らしい技術もたくさん持っているんだけれども、それがビジネスの成長につながっていない背景には、こうした大きな課題があると考えていました。これを完全に壊して、社員一人一人がワクワクして働ける環境にしないといけない。そのために、人事制度も含めた変革をやってきました。
今まではそれをNECの中でやり切ろうとしたけどうまくいかなかった。ですので外から優秀な人に来ていただきました。ただ、あくまでもそれはきっかけであって、最終的には中の人が変わっていかなければならない。その基礎はつくれたと思います。
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