グローバル専業ベンダーならではの
強みが差別化に
――Oktaの製品はグローバルでも多数の導入実績がありますが、競合と比べた強みや顧客から評価される点というのはどういうところにあるのでしょうか。
一つはアベイラビリティ(可用性)です。競合他社の皆さんは稼働率99.9%を保証していますが、Oktaは昨年の7月に、全世界のお客様に99.99%の稼働率保証をいち早く発表しました。認証・認可は、朝仕事を開始するときの最初の入り口になりますから、そこが落ちたときのビジネスインパクトは非常に大きくなります。そういうところで落ちない可用性というのは、Oktaの強みとして挙げられるところです。
二つめは、R&Dへの投資力。二つの側面がありますが、まず、グローバル・国内における専業の競合他社の社員数を比べると、数が一桁違います。グローバルで数百人が開発している会社と数千人が開発している会社では、開発力が全く違うと言えると思います。
また、Oktaの競合として名前が挙げられる大きなグローバル企業が数社ありますが、彼らはメインプロダクトが別にあって、その中の一機能として認証・認可の部分も持っています。例えばその中のある会社では、昨年の新バージョンのリリースは12回、平均すると月に1回でした。Oktaは昨年50回以上、ほぼ週に1回のペースで新バージョンを出しています。セキュリティの新しい脅威がどんどん出てきている中で、それに対応する機能が出てくるのが月に1回だと、その間すごく不安になります。毎週新バージョンが出てくるような開発力というのは、大きな差別化になります。
三つめは、「Okta Insights」というサービスです。Oktaはグローバルで毎日300万人以上の人が利用していますが、そのログイン情報や攻撃情報が全て集積されています。Okta Insightsを通してユーザーの方々に、例えば「今週このIPアドレスから攻撃が来ているので注意したほうがいいですよ」とか、あるいは「Oktaの設定が同業他社やユーザーと比べて甘い設定になっているのでもう少し厳しくしたほうがいいのでは」というようなアドバイスを提供しています。これはシェアが大きく、トップベンダーとしてのナレッジの集積があるからこそ提供できるバリューであり、なかなか他社には追随を許さないようなポイントになっていると思っています。
――6500種類以上のアプリケーションと事前統合しているという「Okta Integration Network(OIN)」も強みだと聞きます。
それが最大の強みだと説明するケースもあります。例えば新しい人が入社してきたら必要なツールを設定しないといけませんが、Oktaを使うとSalesforceのアカウントに数クリックでアサインすることができます。また、ワークフローを作ってあれば、新しい営業担当者が入ってきたらSalesforceのアカウントを作成し、営業部門が共通で資料を置くBoxフォルダーのアクセス権が付与され、かつSlackのグループに加われるようにするという一連の流れがシナリオになって流れるようになり、そうした権限の設定を非常に楽に行うことが可能です。
このOINに関して、最近は日本のSaaSプレーヤーをどんどんリクルーティングしています。すでにサイボウズや弁護士ドットコムに加わっていただいており、そのほか現在仕掛かり中でまだ発表できていないところも複数社あります。日本の競合ベンダーの中には「Oktaはグローバルアプリしか対応していない。われわれは日本のアプリも対応している」ということを言っているところもあるようですが、当社も日本のアプリをカバーし始めていて、他社のそうしたアドバンテージはほぼなくなってくるのではないかと見ています。
――今後の国内ビジネスの方針について教えてください。
日本のビジネスはまだ始まったばかりなので、このままの方向で進むというのが一つです。ワークフォースアイデンティティは、数人から数十万人の規模まで、積極的に顧客を開拓していきたい。特にグローバル展開する大企業に顧客を開拓して、どこの国からであってもきちんとサポートを受けられるという強みは、われわれのようなグローバル企業だからこそのものだと思います。カスタマーアイデンティティにおいても、さまざまなサービスを展開されるサービスプロバイダーがいくつもあるので、そうした方々にぜひOktaを検討していただきたい。ここは既に利用いただいているサービスプロバイダーもいますが、多くはなく、まだまだこれからです。また、Oktaの販売代理店や日本法人の人員についても、今後強化していく考えです。
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Goods
筆記具のブランド「モンブラン」「モンテグラッパ」のペンと万年筆でメモを取る。書きやすさに加えて、「考え事をしながら、スポイトで万年筆にインクを入れたり」する、ちょっとした時間も含めてお気に入り。長いものでは15年以上も愛用しているそうだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
米国本社へ強く意見を主張する
過去、外資系ITベンダー複数社の日本ビジネスの立ち上げや成長の推進役を担ってきた。一般論として、よく日本人は「はっきりNoと言わない」といわれるが、渡邉社長自身は「本社に対して強く意見を言う」ことを心掛けてきたという。
Oktaにおいてもその姿勢は同様だ。一昨年春、現在の上司であるアジア地域の責任者と入社に関する面談の機会を持った際、日本に進出する同社に対し、コンテンツの日本語化やポストセールス人員の確保など、日本市場の商慣習に合わせた体制を整えることを求めた。「他の国に進出するときと日本に進出するときでは、投資の順番やプライオリティーというものは全く異なる」と理解していたからだ。その後しばらくの間、Okta側からの接触がなく「嫌われたかなと思った」が、半年経って、本社側が渡邉社長の求めに応じて予算化を決定したとの連絡。そして人員体制の整備やローカライズを徹底し、結果として「日本法人の立ち上げはスムーズにできた」と話す。
世界展開に注力する米国本社にとって、日本は「フォーカスカントリーのトップ」にあたる、期待度の高い市場。「日本に対する投資にもコミットしてもらえる」と力を込める。現在も加速度的に伸びているという国内ビジネスのさらなる拡大を渡邉社長はけん引していく。
プロフィール
渡邉 崇
(わたなべ たかし)
1992年に東北大学経済学部卒業後、野村證券入社。その後、コンサルティング会社や外資系IT企業で銀行、証券、テレコム、製造業などのコンサルティングに従事し、2000年からは複数の米国西海岸発スタートアップで日本事業立ち上げに参画。04年、アドビシステムズ(現アドビ)に入社し、ソリューションコンサルティング部門責任者を経験。以降も大手外資系企業でのクラウド事業立ち上げやイスラエル発ベンチャーの日本参入を主導し、16年にアピリオの代表取締役社長。20年4月に米Oktaの日本事業立ち上げに加わり、同年7月、Okta Japanの代表取締役社長就任。
会社紹介
2009年に設立された米Okta(オクタ)の日本法人。クラウド型ID管理サービス(IDaaS)「Okta Identity Cloud」を提供し、世界で9400社以上の導入実績がある。6500種類以上のアプリケーションと事前統合していることも特徴。グローバルの従業員数は2600人以上。