紙とデジタルのハイブリッド戦略
ウイングアーク1st
代表取締役社長執行役員CEO
田中 潤
取材・文/安藤章司
撮影/大星直輝
KeyPerson
2021/07/02 09:00
週刊BCN 2021年06月28日vol.1880掲載
ウイングアーク1stは、オンラインで帳票をやりとりできるサービス「invoiceAgent(インボイスエージェント)」を立ち上げた。帳票作成ツールや文書管理ソフトといった主力事業と並ぶ事業の柱に育てていく。invoiceAgentは、注文書や請求書を紙に印刷することなく、デジタルデータのままを取引先に送付できるサービス。この基盤を応用して電子契約や電子伝票といったサービスを追加開発し、シリーズ化していく予定だ。田中潤社長は、「紙やPDF、電子データなど媒体を選ばずに帳票を効率よく運用できるプラットフォームづくりに力を入れる」と述べ、紙とデジタルのハイブリッド戦略によってユーザー企業の業務効率の向上を支援していく。
帳票、文書管理に続く第3の柱
――この6月、新ブランド「invoiceAgent(インボイスエージェント)」を立ち上げました。これまでの帳票系のソフトと何が違うのか教えてください。
invoiceAgentは企業間での帳票をやりとりする基盤サービスです。当社の主力商材は、皆さんよくご存じの帳票作成ツールや文書管理ソフトですが、invoiceAgentはこれらに続く第3の商品の柱として投入しました。
帳票作成の当社製品「SVF」は、国内ユーザー社数2万8000社余り、シェア7割近くをいただいている主力商品です。文書管理の「SPA」と合わせて「帳票・文書管理ソリューション」事業に分類していますが、基本的にユーザー企業の社内向けのシステムでした。今回新しく投入したinvoiceAgentは、企業間で帳票をやりとりするための基盤サービスであり、ペーパーレス化を一段と推進していくものです。
注文書や納品書、請求書など企業間ではさまざまな伝票がやりとりされていますが、現状、その多くは“紙”です。社内ではPCを使ってデジタルデータの帳票を作成しているのに、取引先には紙に印刷してアナログデータとして渡し、受け取った取引先は紙を見ながらPCに入力するデジアナ変換が繰り返されるのは非効率です。invoiceAgentはデジタルデータのままオンラインで安全に帳票を交換できるようにすることで、デジアナ変換をなくします。
――企業間やりとりなら従来のEDI(電子データ交換)と何が違うのですか。
EDIは受発注に特化しているのに対して、invoiceAgentは帳票全般に対応しているのが違いとして挙げられます。また、EDIは人間に優しくありません。決してEDIが果たしている役割を否定するわけではありませんが、EDIは機械による自動化を主眼としていますので、機械に優しい反面、人間には優しくない。この点が帳票がなくならない大きな理由でもあります。世界中で帳票が使われていますが、特に日本の帳票は緻密に設計されていて、いろいろな情報を1枚の帳票に詰め込む傾向があります。慣れた人ならば帳票1枚を見るだけで、パッとその内容が分かります。判子が押してあれば見栄えもいいですしね。
であるならば、これまで慣れ親しんできた帳票をそのまま企業間でやりとりできるようになり、人間による簡単なチェックで、お互いのERPなどの基幹業務システムにデータがデジアナ変換なしにスッと収まるようになる、これが理想的ではないでしょうか。
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Profile
田中 潤
(たなか じゅん)
1976年、山形県生まれ、千葉県育ち。システム開発技術者として主に企業の業務システムやWebアプリケーションの開発に携わったのち、2004年、ウイングアークテクノロジーズ(現ウイングアーク1st)に入社。11年、CTO(最高技術責任者)。17年、COO(最高執行責任者)。18年、代表取締役社長に就任。現在に至る。
Company
会社紹介
ウイングアーク1stの昨年度(2021年2月期)連結売上高は前年度比2.1%減の182億円、営業利益は同43.6%減の32億円。今年度(22年2月期)売上高は前年度比3.9%増の190億円、営業利益は同83.3%増の58億円を見込む。連結従業員数は約700人。