独セロニスは、プロセスマイニングのパイオニアとして注目され、評価額10億ドル以上などの条件を満たす「ユニコーン企業」として急成長している。昨年12月から日本法人の社長を務める村瀬将思氏は、デジタル化の機運が高まる国内でも同社への期待は高まっていると感じており、「ビジネスは絶好調」と胸を張る。「日本の社会を変革できるプラットフォーム」と表現する主力製品「Celonis Execution Management System(EMS)」を軸に、さらなる成長を実現し、日本を元気にしたいと意気込んでいる。
(取材・文/齋藤秀平 写真/大星直輝)
今が最も面白いタイミング
──昨年12月に社長に就任し、半年となりました。直近のビジネスの状況を教えてください。
私が社長となった昨年12月は第4四半期(2021年11月~22年1月)の途中でしたので、今回、フルで四半期の経営に携わりました。第1四半期(22年2月~4月)のビジネスの伸び率は前年同期比4倍ほどになっており、グローバルの幹部らはこのスピードに大変驚いています。5期連続で2倍のペースで伸びているグローバルに比べると、日本の数字はまだ小さいですが、全体の成長に大きく貢献できたことには非常にやりがいを感じています。社員数も私が入社した時と比べると倍増し、年末には3倍以上になる見通しです。これまでの半年を振り返ると、ビジネスは絶好調で、今が最も面白いタイミングだと思っています。
──ビジネスが大きく伸びた要因はどのように分析されていますか。
新規で大手のお客様が増えたことが大きいです。新規のお客様は、ある一部分のプロセスの可視化に取り組み、うまくいくと全社への展開を検討していただけるようになります。われわれのプロジェクトは、完了までにかかる期間が1、2カ月と短いのが特徴で、第1四半期に製品を使い始めた新規のお客様が、第3、4四半期に全社規模で活用を始めていただけることを期待しています。
あとは社内の体制ですね。会社の規模が大きくなると、社員同士が自分たちの指標で物事を話しがちになります。今の私たちは、まだ少人数ということもありますが、営業やマーケティング、パートナーを担当している社員たちがワンチームになって業務を進めています。これはグローバルでも評価されているポイントで、成長に大きくつながっていると思っています。
──これまでの説明会で、今年は「日本のData Execution元年」とのメッセージを出されています。まだ日本ではなじみの薄い言葉だと思いますが、これについてはどう定義していますか。
Data Executionは、データを基軸として、ビジネスオペレーションを自動的に実行・管理することだと定義しています。日本では今まで、業務を進める際は経験や勘に頼ることが多かったと思っています。しかし、少子高齢化で経験や勘を持った人たちがどんどん少なくなっていくわけですから、これからはデータをベースとした仕組みが必要になるはずです。Data Executionの考え方はますます重要になると考えているので、しっかりと浸透させていきたいです。
複数部門にわたるプロセスは改善の金脈
──Celonis EMSが選ばれる理由についてはどのようにお考えですか。
多くのお客様からの引き合いが増えているのは、Celonis EMSの製品力が圧倒的だからだと考えています。世界を見渡すと、われわれが焦点を当てているビジネスプロセスの監査や分析、改善の領域で一部競合する製品はあります。しかし、領域が完全に同じ製品はまだ存在しておらず、Celonis EMSに勝てる製品はないと思っています。
数年前からデジタル変革が騒がれ、コロナ禍で注目度が一気に高まりました。各企業は現在、DXを目指してIT製品・サービスの導入を進めていますが、それが目的ではなく、ビジネスを変革することが重要だと気づき始めています。効率的で持続可能な世界を支える新しいビジネスオペレーションを管理する仕組みとしてCelonis EMSは受け入れられていますし、日本の社会を変革できるプラットフォームだと考えています。
──導入した顧客の反応や動向はいかがでしょうか。
Celonis EMSは、さまざまなIT資産からデータを持ってきて、そこにインテリジェンスを与えて、足りないものにアクションを与えたり、別のテクノロジーとつないだりすることが可能です。部署ごとに個別最適化された無駄やむらが多い業務を全体最適化でき、その効果はお客様も感じています。これは名言だと思っていますが、ある導入企業のCIO(最高情報責任者)からは「複数部門にわたるプロセスは改善の金脈だ」と言われました。先日、初めてユーザー会を開いた際には、われわれのテクノロジーで生産性を上げて、日本を元気にしたいと、参加した皆さんが言ってくれました。「失われた30年」と言われるように、日本の経済が伸び悩む中、われわれと同じ志を持った仲間が増えているのは、とても素晴らしいことです。
──データの活用は各企業にとって課題になっていますが、具体的な事例は出ているのでしょうか。
さきほどお話したユーザー会では最新事例の共有もありました。まだ社名は言えませんが、ある製造業のお客様は、アプリケーションの開発をプロセスマイニングで可視化し、作業を分析することで、開発を大幅に効率化できています。別の物流会社は、毎月の債務伝票の処理プロセスを見直し、新しい手順や業務ルールを構築しました。これまで約60%の伝票で再処理の作業が必要になっていましたが、今はゼロになっています。このように、データを活用して既存のビジネスプロセスを変える動きはお客様の間で徐々に出始めています。
トップリーディングリージョンを目指す
──パートナー戦略を重点領域と位置付けている理由を教えてください。
米誌フォーブスがまとめている公開企業のランキング「グローバル2000」のうち、約10%の215社が日本企業です。われわれは、これらの企業をお客様として獲得することを目指しています。直販だけで全ての企業に製品を提供するのは間違いなく不可能なので、パートナー戦略は非常に重要視しています。ただ、全てのパートナーと同じようにビジネスを展開することは体制的に難しいので、戦略的に組むパートナーや、デリバリーのリソースを一緒につくっていくようなパートナーなどと、アライアンスごとに層を分けて導入の拡大につなげていきます。また、パートナーに全て依存するかというと、それは違うと思っています。私自身、四半期で100人以上の経営者と会っていますので、われわれがハイタッチでエンドユーザーにアプローチすることも進めていきます。
──パートナーにとっては、Celonis EMSを扱うことでどのようなメリットがあるのでしょうか。
Celonis EMSは、パートナーの働き方も変えることができます。これまで社員が携わっていた価値の低い仕事をなくし、より付加価値の高い業務に専念させることができる点が大きなメリットです。自分たちが使った経験があれば、自信を持ってお客様に提案することができるので、まずはパートナーに使ってもらい、そこから導入を広げていく流れもつくっていきたいです。
──最後に今後の目標を聞かせてください。
企業の常務クラスに集まってもらい、情報共有や意見交換などをしている「CXO Club」をはじめ、われわれが実施している取り組みはグローバルで注目され、日本が最先端の場所となっています。これからも急成長につながっている取り組みやノウハウをどんどん加速させて、日本をグローバルの中でトップリーディングリージョンにすることを目指します。もう一つは、持続可能な会社をつくりたいと考えています。私はどんどん前に出て、いろいろなことをやってしまうタイプなのですが、成長を考えると、あまりいいことではありません。私がやらなくても、それぞれの社員が自発的に動き、生産性を高めて、きちんと結果を出せるようにできたらいいと思っています。
眼光紙背 ~取材を終えて~
30年近くIT業界に身を置いてきた。一人のビジネスパーソンとして、Celonisでのキャリアを「集大成」と考えている。
精力的に人と会い、ビジネスについて熱っぽく語る姿は、社長に就任した半年前から変わらない。原動力になっているのは、生産性の低さなどが指摘されている日本の現状を何とかしたいとの思いだ。
新卒時から、仕事に対しては常に全力で取り組んできた。今までの経験は線としてつながり、何も無駄になっていないと感じている。例えるならば「種から育ててきたものが、果実として収穫できるようになった」状態だという。
日本法人は、グローバルでも一目置かれているが、現状に甘んじることなく、さらなる高みを目指す。社内のリーダーには「まだまだ行こうぜ」と発破をかけている。
社会を変えるには、5年、10年と時間がかかるかもしれない。しかし、諦めるつもりは毛頭ない。なぜなら、自分たちがやっていることは「奇跡的なほどやりがいのある仕事」だと信じているからだ。
プロフィール
村瀬将思
(むらせ まさし)
1971年3月生まれ。静岡県清水市(現静岡市)出身。法政大学工学部経営工学科卒。93年、TKCに入社。2000年、印アイゲート・グローバル・ソリューションズ・リミテッドに入社。09年、日本ヒューレット・パッカード(現日本HP)に入社し、HPソフトウェア事業統括執行役員を務めた。16年、ServiceNow Japan執行役員社長。21年12月から現職。
会社紹介
【Celonis】独セロニスの日本法人として2019年2月に設立。業務の自動実行管理を支援する「Celonis Execution Management System(EMS)」を提供している。独本社は11年に設立した。日本や米国などにオフィスを構え、グローバルの従業員数は2500人超。独シーメンスなど数千社の顧客を抱える。最新の評価額は110億ドルを超えている。