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デジタルの「糸」で製造業のDXを

PTCジャパン 社長執行役員

神谷知信

取材・文/大向琴音 撮影/大星直輝

2025/04/14 09:00

神谷知信

週刊BCN 2025年04月14日vol.2055掲載

 PTCジャパンは製造業における「デジタルスレッド」の浸透に注力している。製品の企画・設計から製造、納品後の保守・運用サービス、生産終了に至るまで、全てのプロセスでデジタル化し連携させ、データを1本の糸(スレッド)のようにつむぐ概念だ。製品のライフサイクル全体を可視化することで、生産性や品質の向上、顧客に提供する価値の最大化、トレーサビリティーの強化などの効果が期待できる。PTCはCADやPLM(製品ライフサイクル管理)、ALM(アプリケーションライフサイクル管理)の製品を通じて、全てのプロセスにデジタルを組み込み、製造業のDXを支援する考えだ。神谷知信社長は地方の企業も含めた日本全体の競争力底上げに貢献したいと意気込む。
(取材・文/大向琴音  撮影/大星直輝)

各工程で自社ソリューションを展開

――社長就任から1年半ほどが過ぎました。現在の心境を聞かせてください。

 お客様からの期待値がすごく高いと感じています。製造業は当然、日本市場を支えていますが、その一方でDXが遅れています。少子化やグローバル化などの市場の変化に伴って、DXは待ったなしの状況です。課題については認識していたものの、PTCジャパンに入社して、改めて実感しました。これまで、ERPやCRMなどの企業でさまざまな業界に関与してきた中で、製造業が一番遅れているのではないかと感じるほどです。ただ、伸びしろがあるという点で、チャンスでもあります。少し大げさですが、日本が今後競争力をより挙げていくためには、製造業が元気にならないと絶対実現できないと考えています。

――米Adobe(アドビ)日本法人での経歴が長く、社長も務められました。PTCジャパンは前職とは領域が違いますが、どのような経緯で入社されたのですか。

 アドビは、メーカーとエンドユーザーの間のデジタル体験を向上させるビジネスをしています。実はアドビにいたときも製造業のお客様は多く、当時課題だと思っていたのは「そもそも製品自体が本当にお客様の期待値に見合っているのか」ということでした。カスタマーエクスペリエンス(CX)が向上すればするほど、「人と同じものはほしくない」「よりカスタマイズしたものがほしい」などの要望が増えていきます。そうすると、製造プロセスにおいて、カスタマイズするための工場施設や設計のインフラは整っているのかという話になるわけです。いくら表面の部分に取り組んでも、インフラの部分が改革されないと、真にお客様が必要とするものを届けることはできないと日々感じていました。この課題感に対して、PTCのソリューションやテクノロジーが非常に合致し、縁もあって、入社に至りました。

――製造業の顧客は、具体的にどのような課題を抱えているのでしょうか。また、それに対するPTCジャパンの強みはどこにありますか。

 共通している課題はやはり、紙の図面です。日本のものづくりは、テーブルに置いた図面上で作業するという
ような紙の図面文化から来ています。しかし、人口が減ると図面を書ける職人はどんどん減っていきますし、技術革新に対して、これまでの図面資料や職人の知見だけでは限界もあります。このようなものづくりをやってきた結果、ソフトウェアを先に考えて設計することができず、顧客の指向がCXに移っている中で、対応にどんどん遅れが生じてしまっているのが現状です。紙の図面ではデータが蓄積されず、データの分断が起こり、現場で起きていることをきちんと設計者が理解しきることができていない場合も少なくありません。

 当社は日本で30年以上事業を展開し、CADや、PLM製品などを提供しています。われわれは、設計から製造、運用、サービスに至る製品ライフサイクル全体をデジタル化し連携させたアプローチとして「デジタルスレッド」を形成すると言っていますが、この一貫したプロセスの各工程全てで、自社製品のソリューションを用意しているのがPTCです。

 マーケットのニーズが高く、引き合いは多いです。CADの入れ替えだけでなく、「設計・製造業務全体を改革しなければならないが、どうすればいいのか」といった相談が非常に増えています。
この記事の続き >>
  • 3次元CADが“ステップワン”
  • 地方顧客の支援を強化

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外部リンク

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