ここ20年の間、“新興ストレージ”と呼ばれる多数のストレージベンダーが生まれてきたが、その中でもエンタープライズ市場で生き残り、存在感を高めてきたのが米Pure Storage(ピュア・ストレージ)である。オールフラッシュを前提としたアーキテクチャーと、長期間にわたって最新性能で使い続けられる保守サービスを組み合わせ、国内で市場の成長率を超える伸びを継続。加えて、AI活用の拡大がさらなる成長のエンジンになっている。ピュア・ストレージ・ジャパンの五十嵐光喜社長は「お客様に喜んでいただいている製品を、全国各地に広げていきたい」と、ビジネス拡大に自信を見せる。
(取材・文/堀 茜 写真/大星直輝)
市場を革新し続ける
――IT業界で長年活躍されていますが、次のキャリアにピュア・ストレージを選んだ理由は何だったのでしょうか。
ストレージというと、CPUに付随するものというイメージで、ほとんどの人があまり注意を払っていない市場だと思っていました。ピュア・ストレージに対しても、オールフラッシュで技術的に優れた製品、という印象でした。しかし、携わってみると、とてもエキサイティングな市場です。ピュア・ストレージは、ディスクが回転するHDDはすべてなくすんだという考え方で創業し、市場に変革をもたらし続けています。そのビジネスを日本で拡大する役割に挑戦したいと思いました。
入社してみて、米国本社の日本に対する注力と支援が強力だと感じています。当社の製品は、高速で堅牢で信頼性が高いです。日本の社会を支えている美徳の一つは堅牢さですが、その意味でも、当社製品は日本市場で絶対に受け入れられると米国本社は考えています。日本での成長に自信を持っており、私がそれを推進していく役割です。
――国内でのビジネスの近況を教えてください。
とても順調です。調査会社によると、2025年第2四半期の国内オールフラッシュアレイ市場は、全体の成長率が16.6%だったのに対し、当社は41.8%となりました。市場全体を超える成長率を継続しており、これをさらに伸ばしていけると考えています。
当社製品は官公庁や通信キャリアで採用が多かったのですが、最近は自動車を中心とした製造業や、金融のお客様からの引き合いが非常に多いです。特に、当社のSTaaS(STorage as a Service)は、スモールスタートでき、コストを平準化できる点を評価いただいて非常に伸びています。
――日本市場における自社のポジションをどう分析しますか。
ビジネスの伸びしろは莫大です。国内のデータセンターではまだまだHDDが多く使われていますし、AI時代は、“データを捨てないIT”になっていくはずです。データをいかにスマートに保管しながら活用できるかが、この先10年の絶対要件になっていくでしょう。ディスクを採用している既存のワークロードにプラスして、AI向けワークロードをオールフラッシュストレージが支えていくという意味で、もっともっとマーケットは大きくなっていくことを考えると、当社はとてもいい立ち位置におり、さらに伸ばしていけるとみています。
「高い」という誤解を払拭したい
――オールフラッシュに対するニーズは、米国と日本で差があるのでしょうか。
それほど変わらないですね。ディスクが回転するHDDは物理的に壊れやすいので、故障が少ないフラッシュを採用したいという要望は多くの日本企業も持っています。AI向けに大量のGPUを使うとなると、消費電力もスペースも限られる中で、当社製品が貢献できる余地は大きいです。一方で、日本では、オールフラッシュはまだまだ価格が高いと誤解している方も多いと感じています。お客様の中には、テープアーカイブの代替にフラッシュを使う企業もあるくらいで、当社は低コストの製品も展開しています。市場全体として低価格化が進んでいることをきちんとお伝えすることが重要になってきます。
当社を選んでいただいているお客様が最も価値を感じているのは、ノンダウンタイムアップグレードです。ストレージは5年ごとに入れ替えるのが常識と認識している企業は多く、システム全体を停止させず、データ移行なしに使い続けられることをご存じないケースがまだまだあります。データ移行に社員の貴重なリソースを費やさずに、ビジネスの本質にもっと時間をかけたいという企業の思いに完全に合致し、データインフラの管理コストや、運用リソースを削減することができます。ダウンタイムなしで使い続けられる価値についても、もっともっとお伝えしていかなければなりません。
――ストレージを入れ替えずに使い続けられる独自性は大きな特徴です。
当社のEvergreenアーキテクチャーは、ストレージを一度導入したら、止めずに進化させ続けることを前提に設計されており、唯一無二です。10年保証の製品はほかにもあるかもしれませんが、古い性能のままですよね。当社製品は、10年後も最新性能をお使いいただける点を高く評価いただいています。
――AI向けの高性能製品を投入しています。製品戦略を教えてください。
まず、GPUの性能がどんどん高くなっています。高価なGPUを休ませないことが事業の効率を高めると考えます。GPUにいかに高速にデータをフィードしていけるかが当社の役割の一つです。最新製品の「FlashBlade//EXA」はGPUの稼働率を高めたり、AIモデルのトレーニングや推論の高速化を図ったりすることが可能です。
また、26年夏頃に発表を予定しているのが、データを“AI Ready”にする「データストリーム」です。これは、きちんと成形された品質の高いデータをGPUに送るためのワークフローソフトウェアです。現在、AI向けのデータ加工の多くは手作業で行われており、数週間から数カ月かかると言われています。ここを当社は、ほんの数分に短縮することを目指しています。データを物理的に高速にフィードするだけでなく、論理的にも高速に品質の高いデータをフィードしていくために開発しています。
――AI活用の進展は、ストレージの需要や購買行動にも影響するでしょうか。
AIに関連して、24年、25年はGPUに大きな注目が集まりましたが、26年はデータです。日本が強みを持てるのは、生産現場にあるデータを生成AIで活用していく領域です。データを長期保存し、成形し、AIにシームレスに流していく仕組みがこれから必要になってきます。その際にどうしても避けて通れないのが、データそのものをいかに安全に堅牢に、かつ低コストで管理していくかという課題です。この部分を当社が担っていきます。
――サイバーセキュリティーへの取り組みを教えてください。
お客様の関心は、データを守るのは当然ですが、攻撃を受けた際にいかに復旧するかという点に移っています。当社はデータを定常的に圧縮し、攻撃を検知し、データ復旧も瞬時に可能です。セキュリティーベンダーと連携したフレームワークで、連携して状況を確認できるようにしています。
安定稼働はパートナーの安心にも
――パートナー戦略を伺います。
100%間接販売という方針のもと、大手のパートナーを中心に、より良いデータ環境をお客様に提供するための布陣を敷いています。今後は、全国に当社製品を拡大したいです。当社はディストリビューターを通じた販売体制を取っており、ディストリビューターと検討しながら各地で強みを持つリセラーとのネットワークを広げていきます。
先ほど申し上げたように、国内ではフラッシュは価格が高いのではないかという誤解があるので、それを払拭するために、例えばテープアーカイブを販売しているような企業に当社製品を取り扱っていただくことも進めたいです。
――パートナーをどのように支援しますか。
AIを含め、テクノロジーの進化は速まっています。当社からの情報提供がそのスピードに追いつけていないのではないかと危惧しています。ワークショップなども開催し、最新テクノロジーを理解いただく活動を強化していきます。
当社はストレージ専業ですが、エンドユーザーのお客様が求めるのはITシステム全体という大きい絵になります。セキュリティーベンダーとの連携などは当社だけではできません。包括ソリューションでお客様に提案する役割を担っていただきたいですし、それができるように当社としても支援していきます。当社製品は、高品質で絶対にお客様に満足いただけるものです。稼働率100%で安心してお客様に提供いただけるという点も、パートナーに価値を感じていただけると考えます。
――今後の目標を教えてください。
具体的な業績の数字は公表していませんが、日本法人のビジネスをこの先3年で2倍から3倍にしていきたいです。採用いただいているお客様の満足度が極めて高く、絶対的な自信を持っている製品ですから、伸びていくと確信していますし、達成は可能だと考えています。
日本の強みの一つは製造業ですが、そこでAIを使いこなして成長を目指すには、質の高いデータを国内で保有し、国外に流失しないデータソブリンの確保が重要です。お客様の環境に当社製品を設置しながら、ハイパフォーマンスで安全にAIを活用いただくという意味で、縁の下から貢献していきます。
眼光紙背 ~取材を終えて~
ピュア・ストレージのコーポレートカラーは、明るいオレンジ色だ。2009年の米国本社創業時、競合各社が総じて寒色系のカラーを使っていたことから正反対の色を選んだ。市場を切り開いて「業界のディスラプター(破壊者、ビジネスモデルを根底から覆す革新的な企業)になろう」という思いが込められている。
五十嵐社長は、「社員がみんな、製品を信じ切っていて大好きなんですよ」と明かした。高い技術力と安定稼働できる堅牢性を併せ持つのが、圧倒的な信頼の根源にあるとし、「お客様が喜ぶ製品を提供できることに喜びを感じ、プライドを持っている」。絶対の自信を持つ製品を今後、どのようにして、日本市場にさらに広めていくか。長年IT業界で培った手腕で、ストレージ市場を明るく塗り替える気構えだ。
プロフィール
五十嵐光喜
(いがらし こうき)
早稲田大学卒業。1987年、東芝に入社し、社内情報システムを担当。ソフトウェア企業2社を経て日本マイクロソフト、Apple Japanで要職を歴任。2017年、Dropbox Japanの社長兼Head of APJ、21年、ミロ・ジャパンの社長に就任。25年3月から現職。
会社紹介
【ピュア・ストレージ・ジャパン】米Pure Storage(ピュア・ストレージ)は2009年創業。オールフラッシュストレージの専業ベンダーで、エンタープライズ向けのオールフラッシュストレージ製品およびデータプラットフォームを提供。日本法人のピュア・ストレージ・ジャパンは13年設立。