AIワークロードでは、高性能のGPUを最大限活用するために、ストレージにもより高速な処理性能が求められている。米Pure Storage(ピュア・ストレージ)は、データ移行の速度で世界トップクラスを誇る「FlashBlade//EXA」をはじめ、AI活用に適した製品で、顧客のAI活用を後押ししている。従量課金でクラウドライクに使えたり、膨大なデータを移行せずに済む保守プログラムを提供したりとAI活用に求められる要素をそろえ、シンプルで柔軟性の高いストレージ活用を訴求している。
(取材・文/堀 茜)
FlashBlade//EXA
高性能を最小のフットプリントで
ピュア・ストレージは、オールフラッシュストレージ専業で、創業時からHDDではなくフラッシュメモリーを使ったストレージに特化した製品を提供している。「FlashArrayシリーズ」「FlashBladeシリーズ」を展開しており、AI向けに2025年に発売した最新製品が「FlashBlade//EXA」だ。米Meta(メタ)と共同開発し、AI向けに新しいアーキテクチャーを採用した。単一のネームベースでの読み取り性能が毎秒10テラバイトで、ストレージのシステムとしては世界最高速であると説明している。GPUの稼働率を高めたり、AIモデルのトレーニングや推論の高速化を図ったりすることが可能だ。
菖蒲谷雄・執行役員(左)と岩本知博・プリンシパル・テクノロジスト
ピュア・ストレージ・ジャパンの岩本知博・プリンシパル・テクノロジストは「ストレージの性能がボトルネックになると、GPUの使用率が下がってしまう。EXAは現状世界で一番速いストレージで、これだけの性能がないとGPUのリソースは活用しきれない」と指摘する。EXAは、大規模なAIファクトリー向けに適した製品で、研究機関や自社でLLMを開発する超大企業向けに訴求している。一方、一般的なエンタープライズ企業でのAI活用においては、「FlashBlade//S」がメインの商材となる。
製品の優位性の一つが、フットプリントが小さい点だ。求める容量や性能を実現するためにはハードウェアを並べればどのメーカーでも可能だが、同社では独自技術である「DirectFlashモジュール(DFM)」によって高いレベルの効率性を実現し、より少ないハードウェアで必要な容量を満たすことができる。競合他社と比較すると5倍程度の高い集約率を実現しているといい、必要な電力やラックスペースを減らすこともできる。
物理的な機材が少ないほど故障のリスクが下がり、運用が楽になる点が評価されており、これらに対応するFlashBlade//Sの採用が広がっている。執行役員の菖蒲谷雄・パートナー事業部長は「AIは実行環境だけでなく、元になる巨大なデータも必要だが、その環境も含めてFlashBladeシリーズでシンプルに管理できるのが強みになる」と説明する。
従量課金で柔軟性高く活用
AI時代にこそ求められるサービスとして、同社は従量課金でのストレージ利用を重視している。AIはどの程度リソースが必要か分からない段階でプロジェクトが始まるケースがほとんどだ。スモールスタートできるパブリッククラウドでPoCを実施し、本番環境に移行する際はコストなどの面からオンプレミスにコンテナごと移すことを検討する顧客が増えているが、同社ではそういったニーズに対応するサービスとして容量、性能をそれぞれ使った分だけ支払う「Evergreen//One」を提供している。
顧客が使用するストレージはピュア・ストレージが保有、管理するが、設置場所は顧客のデータセンターなど自由に選択できるので、管理運用は不要でオンプレミスのストレージをクラウドのように従量課金で使える。「可用性とセキュリティーという意味でも、自社環境に置きたいというニーズは強い」(岩本プリンシパル・テクノロジスト)。
エンタープライズ企業がAIに本格的に取り組む流れは加速しており、案件あたりで求められる容量も拡大傾向にあるという。データ量が増大すると、インフラを更新する際のデータ移行が大きな課題になるが、それを解消するのが、同社の永年保証プログラム「Evergreen//Forever」だ。加入すればデータ移行、再購入不要で、5年ごとにストレージを買い替えるというこれまでのやり方から脱却できる。
菖蒲谷執行役員は「構築を手掛けるパートナーもインフラエンジニアが不足しており、データ移行にリソースを割かずに済む。データが巨大になるからこそ、永年保証で使い続けられる価値は数年先により高まるのではないか」と強調する。
同社の販売は100%パートナー経由で、菖蒲谷執行役員は「パートナーにとってAIの領域でビジネスをするのは、いろいろな案件が横串でつながり可能性が広がる」と展望する。製品の特徴、買い方、保守といった要素についてパートナーに理解を深めてもらい、顧客にAI活用における価値を訴求していく考えだ。