インターコムは、コンピューターと通信が融合した領域を強みとして、独自性の高いソフトウェア製品の開発を進めている。ビジネスパートナーと連携した間接販売チャネルを重視しつつも、ユーザー企業先に足しげく通い、自社製品が業務に定着するよう支援する。改善点を製品開発に還元して「磨き」をかけることで、より良い製品づくりに努める方針だ。4代目となる高橋亮社長は、社内外でインターコムを愛する「ファン」を増やし、「100年続く会社」に育てるという歴代社長から受け継いだ使命の遂行に意欲を示す。
(取材・文/安藤章司 写真/大星直輝)
ファンを増やす活動に注力
――まずは社長就任の抱負をお聞かせください。
創業者の高橋(高橋啓介・代表取締役会長CEO)や、前任社長の須藤(須藤美奈子・常務取締役開発本部長)が言い続けている「インターコムという会社を“100年企業”にしたい」との思いを受け継いでいきます。当社は2026年で44年目となります。この先の50周年、そして100周年を目指すためには、働きやすい職場環境、ユーザー企業やビジネスパートナーから愛される会社でなければなりません。社内外に一人でも多くのインターコムのファンを増やしていく取り組みに力を入れていきます。
――ファンを増やすとは、具体的にどのようなものですか。
ファクスソフトの「まいと~く」シリーズや、情報漏えい対策の「MaLion」シリーズなど、当社製品の名前や用途を知っている人は多くても、インターコムがどのような会社かを知らない人は意外と少なくありません。メーカーだからといって、製品の知名度が高ければ良いと割り切らず、インターコムという会社をより知ってもらい、「インターコムと取引したい」「インターコムで働きたい」と思ってもらえるようになることが理想です。
創業間もない頃、数十人の仲間と「ああでもない、こうでもない」と、わいわいがやがや開発をする様子を、私は子どもながらに見ていました。実父の高橋を筆頭に、創業メンバーのバイタリティーがあふれていた職場も良かったですが、50年、100年と続く会社を考えたとき、創業時とはまた違った職場づくりが求められます。
会社が大きくなり、成熟した職場では、多様な価値観や生活様式の人材を受け入れる懐の深さが必要であると同時に、ものづくりの本質的な楽しさをしっかりみんなで共有できる文化を大切にしなければなりません。インターコムのファンを増やすとは、つまりインターコムでのものづくりの楽しさを実感でき、なおかつユーザー企業やビジネスパートナーから愛される好循環をつくっていくことにほかなりません。
――カメレオンのマスコットが、Webサイトや名刺、オフィス受付などにあしらわれていますが、これも親しみやすくする戦略の一環ですか。
私がインターコムに入社した16年ごろから使われ出したマスコットで、創業者の高橋が好んで引用している「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることができるのは、変化できる者である」というフレーズから、環境に合わせて体色を変え、変化に適応するカメレオンがマスコットに選ばれました。
このフレーズは、英国の自然科学者で「進化論」で有名なチャールズ・ダーウィンの発想を下敷きにした言葉で、企業経営にも当てはまる部分が多く、目まぐるしく変わる市場環境に適応できた企業だけが生き残ることを忘れないためという狙いも込めています。
コンピューターと通信を強みに
――今、いちばん売れている製品はどれですか。
当社は一貫してコンピューターと通信が融合した領域を強みとしてきた経緯があり、主力商材においてもMaLionシリーズを筆頭に、画面共有型のPC操作支援の「RemoteOperator」シリーズ、帳票をWebや郵送、ファクスなど取引先に応じた方法で送付できる「Web帳票便」といった当社の強みを生かした製品が売れ筋です。
MaLionは昨今のランサムウェアの猛威や、経済産業省のサプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度への対応などに役立つツールとして販売数が伸びています。RemoteOperatorはヘルプデスクの担当者がエンドユーザーのPCを遠隔で操作しながら保守サポートする用途で納入数が増えています。PCのリモート操作系のソフトは世の中に多くありますが、RemoteOperatorは接続が安定しており、仮に通信が途切れても自動的に接続を回復させる使い勝手の良さに高い評価をいただいています。
Web帳票便は26年8月に発売した製品で、請求書などの帳票をオンラインで取引先に送付できるWeb配信サービスです。メールでパスワード付きZIPファイルを送り、そのパスワードを別メールで送る、いわゆる「PPAP」を置き換えるファイル転送サービス「Final Document」の技術を発展・応用しており、中堅・中小企業ユーザーでいまだに残る紙の請求書のデジタル化を後押しします。
取引先がデジタル帳票を受け取る準備ができていない場合は、郵送やファクスで送付する選択肢も用意しています。この場合はWeb上で受け取れる案内書面を同封し、取引先の自発的なWeb移行を促すところまでサポートしています。
まいと~くブランドのファクスソリューションは、堅調に利用社数を積み上げています。近年のオフィスは電話回線を引かず、インターネット回線のみとする動きがありますが、当社の「まいと~く Cloud」は電話回線を必要とせず、インターネット環境さえあれば、どこにいてもファクスを送受信できることが評価されています。台風や地震で出社できないときもオンラインでファクスの送受信が可能であるほか、ランサムウェア被害などで受発注システムが停止した際、ファクスで代替するBCP(事業継続計画)対策として見直されています。パッケージ版の「まいと~く FAX」も好調です。
客先訪問を重ねて製品を磨く
――AIの活用はどうですか。
AI-OCRをはじめ製品にAIを組み込むことを進めていますが、まずはAI駆動開発を社内に取り入れ、開発生産性を高めている段階です。生産性が高まれば働き方改革にもつながり、新しい商品企画など創造性を発揮する領域に力を注ぎやすくなります。従業員数70人規模である子会社のインターコムR&Dセンターは、千葉県南房総市と仙台市に研究開発センターを置き、AIを活用した生産革新や製品へのAI機能の実装を進めています。
――今後の製品戦略についてお話しください。
商品企画にこだわって、楽しくつくることが原点です。企画が立ち上がって、何人かのチームをつくり、いろいろ意見を交わしながら製品をつくりあげていくのは今後も変わりません。とはいえ、その製品が売れなければ意味がないわけで、ユーザー企業に納品したあと、どれだけ役に立っているのか、今一つ及んでいないところがあれば、それはどういうところなのかを継続的に追っています。
インターコム単体の従業員の約170人のうち、半数以上が営業です。営業メンバーを中心に四半期ごと、あるいは半期ごとに客先に訪問し、使い勝手や改善すべき点を丁寧に聞き取り、製品開発に反映していくサイクルを回していくことで、「製品をつくって終わり」ではなく、継続的に「磨く」ことを重視しています。
販路はビジネスパートナー経由の間接販売チャネルが中心です。製品がユーザー企業の業務にしっかりと定着し、その後のアップデートの際も継続して採用いただけるとなれば、パートナーも安心してユーザー企業に提案していただけるでしょう。この好循環の維持に努めます。
眼光紙背 ~取材を終えて~
趣味にも全力で打ち込むタイプで、一時期は料理にのめり込んだり、ハウス・ミュージックに合わせたストリートダンスに熱中したりと、「目の前にあるものに集中することが楽しいし、特技の一つ」だという。
家業を継ぐことを前提にインターコムに入社し、現在までの10年のうち、初めは総務に勤務し、その後は営業を担ってきた。料理やダンスのように「総務や営業の仕事にも没頭して、楽しむことができた」と話す。インターコムで働く従業員にも「目の前の仕事に集中し、楽しみながら、持てる実力を100%発揮してほしい」と、職場環境や働き方の改善に意欲を示す。
目指すべき会社の姿として掲げている「100年続く企業」や「インターコムのファンを増やす」ためには、多様な価値観や生活様式の従業員が生き生きと働きながら、能力を発揮することができ、従業員一人一人が自社のファンになるところから始まると考えている。
プロフィール
高橋 亮
(たかはし りょう)
1979年、千葉県出身。米国コフィービル・コミュニティーカレッジ卒。2006年、不動産業界向け業務ソフト開発のいい生活入社。10年、トランスコスモス入社。16年、インターコム入社。26年7月1日付で現職。
会社紹介
【インターコム】独立系パッケージソフトベンダーで、汎用機のエミュレーターやEDI(電子データ交換)、ファクス、PCの遠隔操作、情報漏えい対策など通信に関わるソフト開発に強みを持つ。1982年設立。千葉県南房総市と仙台市に研究開発センターを有する。連結従業員数は約240人。