2001年のベストニュースとして東芝デジタルメディアネットワーク社の西田厚聰社長があげたのは、3000人強の技術者を集結した開発環境である「青梅工場」(東京都青梅市)の11月1日の竣工である。一方、ワーストニュースは全体的なIT不況の到来だった。東芝はもとより国内のパソコンメーカーにとっては、新たな市場の創造につまずき、経営体質の脆弱さを突かれた厳しい1年だった。だからこそ、技術開発に資源を集中し、新たな市場の創造が急がれる。西田社長に東芝デジタルメディアネットワーク社の02年の展開を聞いた。

 「02年は体制を整えて市場に打って出る」──。

 西田社長はそう意気込む。01年、米国のIT不況の波が「軟弱な体質」の日本経済を直撃した。IT業界では、パソコンと半導体ビジネスの収益構造が悪化の一途を辿り、その間隙を縫うように躍進したデルコンピュータの安値攻勢で、東芝を始め、国内メーカーが手痛い打撃を受けた。これまで米国企業の安値攻勢に晒されてきた国内パソコンメーカーだが、「“デルモデル”と安値攻勢は単なる投げ売りではないだけに、やはり脅威」であり、従来の価格競争とは異なる種類のものであると、西田社長は分析する。

 このような市場環境に対応するために、東芝デジタルメディアネットワーク社では、02年度以降の展開について、「効率・軽量経営」を指針とし、大きく3つの施策を打ち出す。

 第1に、社内業務のIT化の推進、第2はグローバルなSCM(サプライチェーンマネジメント)システムの構築・運用、第3は競争力の確保である。

 とくに競争力の確保については、「(最も競合企業に位置づけられる)デルになくて、東芝にあるものとは何かを徹底的に追求していく」ことにある。それは「経済活動の基本である新需要の創造」を目指すことである。

 昨年11月1日に青梅に3000人以上の技術者を結集し、7階建ての新工場を完成した。パソコンだけではなく、映像、光・磁気ディスク、通信など同カンパニーが取り扱う製品を横断的に研究・開発する環境だ。

 「東芝の強みは技術開発を自社で行える点。また、開発した技術を自社で製造する強みもある。新たな市場を創造するには、革新的な技術の開発と緻密な製造体制が不可欠である」。この点は、デルには真似のできない部分だ。

 02年1月には、ワイヤレスLANを内蔵したPDAを発売する。WIA(ワイヤレス・インターネット・アプライアンス)という同社の新たなカテゴリーに属する新製品の第1弾となる。ワイヤレス環境でのローミング技術「モバイルIP」を独自に開発し、ビジネス市場に訴求する。4月にはサーバーにPBX(構内交換機)の機能を搭載した、ワイヤレス環境化でVoIPを可能にする統合ソリューションを発表する予定だ。

 コンシューマ市場では、「ホームサーバー」の研究・開発を進めている。IBM、ソニーと共同で「ホームサーバー」に特化した専用チップ「ブロードバンド・エンジン」の開発「CELL計画」を進めており、「04-05年には製品を市場に出す」計画である。

 デジタルメディアネットワーク社の取り組みは、パソコンを始めとするさまざまなハードウェアをワイヤレスネットワーク環境で接続可能にすることを目指す。また、バッテリー性能の向上や低消費電力化への取り組みなど、東芝が得意とする基礎技術開発を並行して行っていく。

 「総合電機メーカーというよりも複合電機メーカーを目指す。02年以降はその真価が問われる時代」とし、ワールドワイドの市場を視野に入れた大攻勢の準備が着々と進行中であることに、西田社長は自信を見せる。