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ネット業界に波紋広がる 経済産業省の迷惑メール防止策

2002/01/21 16:06

週刊BCN 2002年01月21日vol.925掲載

 経済産業省が迷惑メール防止強化策を打ち出したことで、ネット業界に波紋が広がっている。防止強化策がどの程度実効性を備えているのか。業界からはさまざまな評価があがっている。

 ネット広告大手、サイバーエージェントの携帯電話向け広告子会社であるシーエー・モバイルは、「創業当時から利用者のパーミッション(広告配信に対する利用者の同意)を取り付けており問題ない。

しかし、どのような形で、このパーミッションを第三者に証明していくかという点が不明確。また、悪質な業者に対し、どの程度実効性を高められるかも課題だろう」(経営企画室の日下部祐介氏)と指摘する。

 迷惑メール防止強化策とは、(1)広告メールの発信者アドレスを明示、(2)件名欄に「!広告!」と表示、(3)受信拒否の連絡先を表示し、表示しない場合は「!連絡方法無!」と表示する――というのが主な内容。

 違反者には罰則規定もあり、2月1日から適用する。利用者の同意を得て広告を配信する場合は適用外となる。

 ヤフーショッピング事業部の殿村英嗣事業部長は、「ヤフーによる広告配信は、同意を得た利用者だけに送付しているので問題ない。ただし、今回の法令改正により、この“同意”(パーミッション)を取るか取らないかの違いが、従来にも増して重要になるのは確実だ」と、今後、じわじわと影響が広がっていくと話している。

 サイバーエージェントでは、「今回の法改正により、パーミッションが取れていない顧客情報は、まったく価値がなくなるだろう」と言い切る。

 メール配信サービスの老舗であるトライコーンの波木井卓社長は、「業者のなかには経産省の発表後に、すぐさま『!広告!』と表示を入れているところも出てきており、すでに効果は出始めている」と話す。

 また、「これまで特定ドメインからのメール受信を拒否する設定や、特定アドレスのものしか受信できない設定にするなどの方法はあったが、いずれも融通が利かないものばかり。利用者が欲しいと思うメールも、設定次第で受信できなくなる弊害も出ていた。ドコモなど携帯事業者やプロバイダのサーバー側で、無断送信=迷惑メールを自動的に排除してくれるようになれば、逆に同意が取れている広告が配信しやすくなる」(波木井社長)と、運用次第でビジネスがやりやすくなると話す。

 業界関係者は、「これまで同意を取らずにメール配信をしていた事業者は、迷惑メールが社会問題化する風潮の中で“悪徳業者”などと呼ばれてきた。法整備が進むことで、いくら『!広告!』と表示したところで、同意のない広告メールはビジネスとして成り立っていかなくなるのではないか」と話す。

 いずれにしても、迷惑メールで、利用者のメール広告に対する心証が悪くなっていたのは事実。

 今回の施策により、迷惑メールにより“迷惑”を受けていた通常の事業者と、迷惑メールをばらまいていた事業者との区別が明確になり、健全なビジネスがやりやすくなったのは事実のようだ。
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