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ウェブサービス 相互運用性の実現に向けた動き
2002/03/11 11:00
ソフトウェアによる計算処理において、一連の全体処理を構成する各処理単位のそれぞれをオブジェクトとして独立させ、その内部の振る舞いを外部から隠蔽することで各オブジェクトの強度と再利用性を高める手法が、オブジェクト指向と呼ばれるものだ。
この思想は、ソフトウェアを設計する際の重要な指針として広く利用されてきた。最近話題にのぼることが多いウェブサービスに関連して、その健全的発展を促すための重要な指針として関心を集めている。
ウェブサービスは、それ単体で一連の処理全体を提供することが基本目的ではなく、インターネット上の一連の処理の一部分を構成する一処理単位として、自律的に機能することを要求される。
複数のウェブサービスが機能的に動作することで、その全体がはじめて具体的に意味のある処理を提供することになる。従って、それぞれのウェブサービスがお互いに安全かつ円滑に情報交換できる環境を確保することが必須なのである。
もしこの要件が満たされなければ、ウェブサービスは、各メーカーがこれまでに相互運用性を考慮することなく、自社内の仕様で全てを完結させようと試みてきた硬直的なシステムと何ら変わらない。
従って、ウェブサービス間の相互運用性の確保が、ウェブサービス市場の今後の健全な発展には欠くことのできない要件となっている。
このような標準仕様を確立するにあたり、有力企業間の利害や思惑が交錯することで、事態の円滑な進展を妨げてしまう例が、今までにも多くあった。
しかし、ハード、ソフトを含んださまざま局面で、過去から現在までに綿々と繰り広げられてきた多くの標準化闘争の中に流れるこのような古い文脈は、ウェブサービスに代表される、インターネットという大標準を全ての人々が共有する事を前提としている21世紀の新しいコンピューティング時代において、もはや齟齬を生じている。
本質的民主主義の理念に基づいて全てが決定されていくこれからのコンピューティング時代においては、それをどのように標準化すべきかという問いかけは、もはや意味をもたない。
確実に標準化されているものにしか存在意義は与えられず、この前提に勝ち残ったものの間で、新たな次元による技術闘争が発生して行くことになるだろう。ウェブサービスの成功は、ひとえに市場全体が平等に参画可能な枠組みを構築できるかにかかっている。(大平 光)
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