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日本音楽著作権協会など 日本MMOに損害賠償請求

2002/03/11 11:00

 日本レコード協会加盟19社と日本音楽著作権協会は、ファイル交換サービス「ファイルローグ」を運営する日本MMO(松田道人社長)を相手取り、総額3億6000万円余りの損害賠償請求を2月28日、東京地裁に起こした。一方、MMOの松田社長も「ピアツーピア(ファイル交換)技術の可能性を消さないために闘う」と強気だ。

ファイル交換サービスが争点

 著作権問題に詳しいコンピュータソフトウェア著作権協会の久保田裕専務理事は、ファイル交換サービスの問題点について、「スーパーで包丁を売っても犯罪件数は増えないが、ファイル交換サービスを放置すれば、確実に犯罪が増える」と話す。現状のファイルローグ方式では、権利者の許可なく不当に著作物が流通する手助けをするものであり、この点において、レコード協会などの主張を支持する。

 ファイル交換は、権利者の知らぬ間に著作物が行き渡り、著作物の価値を下げる力をもつ。サーバーに著作物を許可なく登録した場合、比較的容易に登録者を判別できるが、ファイル交換では誰が著作物をやり取りしているのかを特定しにくい。

 「ファイルローグの違法性を突き詰めると、著作物を不当に交換した利用者にある。だが、これを放置したMMOも同罪だ。MMOは、著作権に触れる音楽ファイルを削除すると言っているが、消極的過ぎる」と指摘。その上で、「ファイル交換技術の可能性をつぶすべきではない。あくまでも運用の問題であり、これを拡大解釈し過ぎ、権利者の権利ばかりを追求しても、豊かな情報産業を築くことは難しい」と、どうバランスを保つかが課題と考える。

 この点においては、ゲームソフトの中古販売問題も同様の課題を抱える。ソフトメーカーと販売店側とが歩み寄らなければ、メーカー側は自衛策に走らざるを得ない。ゲームは急速にネットワーク化しており、利用者から月額課金による“遊戯料”を取る方式に変わりつつある。こうなれば、パッケージを売買する意味がなくなり、中古販売も消滅しかねない。

 音楽CDの分野でも、レコード会社のエイベックスがコピー防止機能付音楽CDの発売に踏み切った。エイベックスでは、「自分の楽しみのためにCDやMDに録音することは、顧客に与えられた権利ではなく、一種の免責事項だ」とし、コピー防止機能付き音楽CDを今後も出し続ける方針。

 こうしたCDが増えると、音楽を楽しむことを前面に押し出しているパソコンの“楽しさ”が半減する。売れ筋パソコンの多くが、AV(音響・映像)系のパソコンであり、大きな打撃だ。

 久保田専務理事は、「どうしても音楽コンテンツが必要ならば、音楽で利益を得ようとする人たちが音楽プロダクションをつくり、自分たちでコンテンツを制作するべき。既存の大手レコード会社は、歌手を発掘し、テレビ局に売り込み、CDを宣伝するなど、相応の投資をしている。それでも不当に音楽CDが高いと感じるならば、不買運動を起こすなど、社会的に盛り上げるしかない」と厳しい。

 「一部に、ファイルローグが音楽業界に風穴をあけて新風を吹き込んだという歪曲した考えがあるが、これは間違い。既存の音楽に安易に便乗するのは、『自分勝手のわがまま』以外のなにものでもない。きちんと合理的な手続きを踏み、社会的に認められる手法をとるべき」と指摘する。

 ファイル交換やパソコンは、コンテンツがないと成り立たない。一方、著作権者にとっても、インターネットやパソコンは音楽の有力な販売チャネルのひとつ。ファイル交換やAVパソコンなど、新しい可能性をつぶしてしまうのではなく、双方が納得したうえで、折り合いをつけることが求められる。
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