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HPの家族的経営にピリオド 唯一の道、されど受難の道

2002/04/01 16:15

週刊BCN 2002年04月01日vol.935掲載

 米ウォールストリートジャーナルの紙面広告を使った株主票の激しい争奪戦を経て、コンパック・コンピュータの買収案件をめぐるヒューレット・パッカード(HP)の株主総会は、僅差での買収承認という結果で幕を閉じた。しかしこれからが新生HPの正念場。買収合併が唯一の生き残り策といわれるものの、まだまだ多難が続きそうだ。

 経営陣の発表によると、株主総会は同買収案件を僅差で承認したが、ウォルター・ヒューレット氏を中心とする創業者家族ら買収反対派によると、票差はわずか1%以下。正確な結果が出るまでに1か月はかかる見通しで、しばらく内紛は続きそうだという。

 日本的ともいえる家族的経営が特徴だったHPだが、今回のいざこざで従業員の間に亀裂が生じたのは事実。カーリー・フィオリーナ最高経営責任者(CEO)は「(このいざこざを)水に流して、共通の目的のためにまた1つになることを希望します」と株主総会で語っている。新生HPの最初の仕事は創業者一族との関係修復になるとみられているが、買収後のHPでウォルター・ヒューレット氏が取締役に返り咲くかどうかに関し、同CEOは言明を避けている。

 合併後には、重複する部署の削減などで1万5000人のレイオフが断行されるもよう。すでに活動を開始している900人の合併作業班によると、家族的経営のHPの各部署よりも激しいリストラを潜り抜けてきたコンパックの部署の方が効率的に運営されている場合が多い。このため表面上はHPによる買収という形を取っても、現場レベルで生き残るのはコンパックの部署との見方が有力だ。HPの家族経営の理念がいよいよ崩壊するわけだ。

 これもあってHP従業員の少なくとも4割は今回の買収に反対するといわれ、従業員退職年金が所有する株の75%は買収反対に回った。株主総会でも、フィオリーナCEOに対してはブーイングが起こったが、ヒューレット氏に対しては多くの従業員株主が起立し割れるような拍手を送った。新生HPは、分裂した従業員を1つにまとめ、さらにコンパックの新しい従業員を受け入るという離れ業をやってのけなければならない。

 世界のパソコン市場ではデルコンピュータとIBMの2強支配が一層が鮮明になりつつある。このままではHP、コンパックともにジリ貧に陥ることは火を見るより明らか。両社が1つになることしか総合コンピュータメーカーとして生き残りの道はないといわれる。

 米調査会社フォレスター・リサーチによると、顧客が抱くイメージは両社とも似通っており、合併には理想的な組み合わせという。

 新生HPの戦略は、(1)デスクトップパソコン市場でHPブランドを捨て、コンパックパソコンの直販に注力、(2)サービス部隊の増強でIBMを追随、(3)家族経営に変わる新しい企業イメージの構築、などが挙げられる。

 果たして新生HPは、デル、IBMに対抗できる勢力を築くことができるのだろうか。フィオリーナCEOの手腕が問われるのはこれからといえそうだ。(湯川鶴章)
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