AI(Artificial Intelligence)は、コンピュータの世界で古くから研究が進められてきた分野であり、昨今の遺伝子解析などの科学研究分野に大きな貢献をもたらしている。そんななか、業務分野であるCRM市場でのAIの積極低な採用が、具体的かつ実践的な成果をもたらしつつある。

 人工知能と訳されるAIは、生命体がもっている柔軟な思考能力をコンピュータ上に実装しようと試みるもの。コンピュータの未来が語られる場合に必ずと言ってよいほど登場する究極の研究目標として、古くから世界中の多くの研究者がその研究と開発にいそしんできた。

 実際のAI行動は、新しい情報が目の前に登場するたびにそれと過去の情報とを照らし合わせて吟味し、その新情報のもつ意味やそれに対する具体的対応施策を自身で結論づける。

 そしてその結論を実行すると共にその実行結果をさらに自身の履歴情報として取り込むことで、自身の行動規約を経験的に構築して行く循環プロセスとして説明される。

 これは、たとえば、生まれたての赤ちゃんが自分の行動のなかからさまざまな事柄を学習して行く過程に顕著に現れている。

 人間を含むおよそ全ての生命体が持ち合わせている生命維持プログラムの基本行動パターンといってよい。

 しかし、人間の振る舞いそのものを模倣するような水準のAI動作をコンピュータ上に実現するには、まだまだ限りない時間が必要なのではないかという意見が、AI研究者の間でしだいに大きくなっている。

 鉄腕アトムのようなロボットを可能にするAI理論の誕生は、そう近い未来ではない。

 この反省から、これまでのAI研究の成果をいかにビジネスに適用するかという視点が徐々に脚光を浴びるようになった。

 CRMへのAI技術の応用は、この文脈のなかで登場してきたものだ。

 すべての企業は、顧客が何を求めているかを模索し、それに沿ったサービスや製品を提供する。よってこの模索行為を支援するシステムは全ての企業に恩恵を与える事ができる。

 CRMはまさにこの分野を支援するシステムであり、CRM企業が自社製品の市場訴求力を高めるために導入したAI技術に基づく効果的なサービス内容が顧客企業に広く受け入れられ始めている現状は、今後のCRM市場の動向、更には今後のAI研究の行方にも大きな影響を与え得る。

 紙オムツと缶ビールがなぜか一緒に売れている事実を捉え、共稼ぎの男性が妻の依頼により買い物に来たときの衝動買いの発生が増えているという市場傾向をデータからはじき出した米国スーパーの事例は有名だ。これはAI手法がCRM市場での製品差別化に向けて積極的に採用されている実態を説明する好例だろう。

 顧客の嗜好に限りなく沿ったきめの細かい販売戦略やサービス内容を設計したい企業にとって、AI型CRM製品はもはやなくてはならない重要な企業戦略ツールとして位置づけられつつあるようだ。(大平 光)