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HP、人員削減プラン発表 地域住民に動揺広がる

2002/06/17 16:21

週刊BCN 2002年06月17日vol.945掲載

 

 ヒューレット・パッカード(HP)が合併にともなう人員削減プランを発表した。5月にコンパック買収を終えたばかりの同社は、社内の統合を迅速に進めることを目標にしている。しかし、従業員の多くはシリコンバレーに長年住んできた住民だけに、地域内でさまざまな波紋が起こるのは避けられない。

 HPはコンパックを買収後、社内システムの構築に全力を注いできた。6月4日にボストンで開かれたアナリスト向けの説明会で、同社のボブ・ネーピアCIOが、両社合併後に社員向け内部ポータルサイトを立ち上げたことを報告している。約23万の電子メールボックス、22万台のデスクトップ、7000以上のアプリケーションを抱える大企業にとって、このプロセスを問題なく完了できたことは意義があったといえよう。

 しかし同じ発表会で、人員削減についての具体的な話が、カーリー・フィオリーナ会長から明らかにされた。今年10月末までに1万人を、そして来年末までに更に5000人の人員削減を行う予定だという。同会長は、この削減目標を予定通りに達成するために、早期退職手当などのプログラムを導入することも発表している。

 今回のコンパックとの統合で、HPは人員のほかにも資材調達や不動産といった非人件費などの削減を予定している。総額25億ドル以上のコストを削るという大きなプランを達成する構えを見せている。

 「従業員には、できる限り精神的なショックを与えたくない」という理由から、なるべく早く対象者にアプローチをかけ、退職者を募りたいとフィオリーナ会長は語ったが、やはり1万人のカットである。本社のあるカリフォルニア州パロアルト市周辺では、当然のごとく、ここ数日間、住民たちの間から色々な声が聞かれるようになった。というのも、地元では「地域と人を大切にする会社」として有名なだけに、ショックを受けている人間がそれだけ多いということだ。

 「人員削減という話そのものにショックは受けていません。何にショックを受けたかというと、今年の10月までに1万人という、削減のタイミングと数にですよ」と言うのは、パロアルト市内にある私立の幼児教育センターの教師。

 「われわれの学校の生徒の親御さんの多くがHPで働いているので、彼らがこの町をいきなり去ってしまうとなると、こちらも困ってしまうわけです」

 それだけHPの今回の決断は地元の人間に心理的な影響を与えていると言っても過言ではない、ということであった。ちなみにこのセンターでは、2年前には33人の生徒がいたが、今年の9月から始まる来年度の生徒の登録はまだ15人にも満たないという。

 HPの計画では、今年の10月末までに、とり急ぎ5億ドルの経費節減を達成することになっている。これは従来の予定金額より1億1000万ドルも上回っているとウォールストリートジャーナルが発表している。それだけに、同社にとってみれば地元の意見は二の次でも仕方なし。この苦しい時期をどれだけ早く抜け出せるかという、ある意味での「賭け」案に出てきたと読める。(飯田仁子)
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