いま、日本の製造業の中国への生産拠点シフトが加速化している。80年代の後半から本格化した対中進出は、95年以後は多少減少傾向にあったが、去年中国のWTO加盟にともなって一気に加速化され、前年比42%増の傾斜的な流れとなっている。

 日本の企業が中国に生産拠点をシフトする主な要因は、中国当局の税制面での優遇政策、優れたインフラ環境、安い人件費などがあげられる。

 さらにもう1つの要因は、ここ数年海外企業から技術を吸収し続けてきた中国が、沿海地方を中心に技術水準の引き上げにより産業高度化を実現し、安くてよいものを作れるようになったからである。

 伝統的な産業構造を守ってきた日本は、産業グローバル化の流れのなかで競争力を失いつつあり、工場を海外に移転せざるを得ない現実に迫られている。

 昔は繊維、機械、食品加工など一般製造業の工場移転が主流であったが、いまは、むしろ電子、通信、ソフトなどハイテク企業の進出が目立っている。

 上海、天津、広東地域に進出している日系企業はすでに1万社を超えており、今後は中小企業を中心にさまざまな形での生産移管がさらに進むものと予想される。言わば日本の産業空洞化も一層深刻さを増すことになる。

 進出企業のひとつ、「天津偉栄機電有限公司」という精密金型設計製作の企業は、天津市内の安い敷地内にある日本の法人である。群馬県伊勢崎市に本社を置くこの会社は、2年前から天津に生産拠点をシフトし、いまは日本人スタッフ2人と現地従業員80人体制で、得意の精密金型や端子などを作って日本に納品している。

 現地では素質のよい安い労働力を手軽に雇うことができ、利益もそこそこで、シフトしたメリットがあると千保木長治理事長は言う。

 日本の精密金型世界で40年という歳月を歩んで来たベテラン経営者の話であった。ところが、本社の43人の従業員の内、営業チーム8人を残して、30人以上がリストラされたという話になると、彼はつらい表情を隠せず口を閉ざした。

 景気の長期低迷に苦しんでいるなか、多くの日本企業は単なる製品のコストダウンだけでなく、13億人の巨大市場に販路を求め、中国市場を目的として進出するケースも増えている。

 東芝は来年4月から中国・抗州に年間240万台の生産能力をもつ大規模なパソコン生産拠点を建設する。全世界に出荷できる戦略拠点を中国に設けると同時に、中国市場にも本格参入する。

 トヨタ自動車も天津で中国第一汽車との合弁で新たな高級車生産工場をつくり、05年までには稼動する計画だ。ホンダも来年から格安の二輪車を中国で販売する計画である。

 経済産業省の調査によると、中国の現地工場を強化、拡大したいという企業は進出企業全体の8割を超えている。今後も製品の価格競争が一段と激しくなるなか、競争力を高めるため、中国に生産拠点をシフトする流れに一層拍車がかかることになる。(李 龍植)