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模造品と戦う日系企業 ほど遠い徹底的な防止
2002/07/29 16:24
週刊BCN 2002年07月29日vol.951掲載
上海市中心部の威海路に何十件の店がずらりと並ぶ上海最大の自動車部品商店街がある。輸入ブランドも数多く販売されているが、店に並んでいる商品の6割以上が模造品と言われている。
住友電装の電波防止エンジンケーブルを中国のメーカーに供給しているA氏は、威海路の部品街を訪れたところ、見た目ではまったく区別がつかない何種類もの偽の日本製ブランド品が安い価格で堂々に販売されていることに唖然とした。サンプルを日本に持ち帰り訴えることも検討したが、結局実態のない現地会社を相手に提訴することは保留した。
中国はいま世界の工場と言われるが、世界最大の模造品工場でもある。
問題は、模造品を取り締まる中国政府が、自国産業保護のため、特許料を求める日米など外資系企業の正当性をなかなか認めないことにある。
また、ニセモノ工場の取り締まりについても、地方政府の模造品放置姿勢から軽い罰金や警告にとどまり、大きな罰は科されないため、徹底的な防止にはつながらない。
最近、中国の模造品メーカーはさらに組織化されている。複雑な技術を要する製品については、複数のニセモノ工場に分業化され、完全なネットワークのなかで巧妙に仕上げられるため、摘発が非常に難しい。
世界中に出回っている“もじり商標”を巡って中国寧波市の工商局が調べたところ、寧波市456社の生産加工メーカーの内、依頼先の商標取得を確認しているメーカーはわずか26%に過ぎなかったという。その体質が“もじり商標”の温床となっている。
中国進出企業の模造品による年間被害額は1000億円を上回っており、中国の企業を裁判に訴える日系企業が相次いでいる。中国の模造品騒ぎは政府レベルまで発展し、日本の経済産業省は5月に中国の経済貿易委員会に対し取り締まりを強化するよう求めた。
中国の技術向上にともないニセモノの高品質化が進むなかで、商品のブランドに命を掛けた多くの日系企業は、その対応に頭を痛めている。
ひょっとしたら日本の製品が安くて高品質化された中国のニセモノに市場を奪われてしまうこともありうる。
トイレットペーパーから二輪車、DVDなどのハイテク製品まであらゆるニセモノをつくり出す模造品の天国中国で、有効な対応策もなく、無防備状況に置かれている進出企業に対しては厳しい戦いがしばらく続きそうだ。(李 龍植)
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