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危険なVPN 脅かされるデータの安全性

2002/08/12 16:26

週刊BCN 2002年08月12日vol.953掲載

 厳しい経済状況が続く米国IT市場だが、VPN(Vertual Private Network)におけるデータ安全化対策分野が比較的堅調な成長を記録している。企業内で高まっているイントラネット拡張への要求を、低予算のなかでいかに安全かつ効率的に処理するかによって、企業のIT能力が試される時代になった。

 「インターネットは専用線だ」と、ネットスケープの生みの親であるマーク・アンドリーセンが発言してから、はや十年近くが経過する。

 物理回線を占有せずに仮想的な専用線環境を構築するVPN技術は、当時から日進月歩の進歩をとげ、その市場規模を拡大し続けている。少なくとも2006年頃までは、さらに着実な上昇傾向を維持し続けるだろうと専門家は予測している。

 01年度時点で既に3200万人規模と言われている米国の遠隔地労働者の15%程度は既にVPNの恩恵に与っていると見られている。インターネット接続環境がかつてのダイアルアップからブロードバンドへ移行するにともない、VPN機能の可用性や利便性も合わせて向上しており、VPNの利用を希望する就労者の数は今後も増加の一途を辿ると予想される。

 しかしこのVPN市場拡大のなかで、データの安全性に対する強い懸念が専門家から指摘されている。

 VPNでは、家庭のパソコンや外出先のノートパソコンと企業内イントラネットとを接続することになるが、VPNを構築するために必要なクライアント側の各種設定は専門的であり、およそ一般ユーザーの手に負えるような作業とは言いがたい。

 VPN構築に必要なクライアント側の設定作業を一般ユーザーが自分自身で行ったとして、もしその作業内容に瑕疵があったとしても、そのことでユーザーに何かの責任を求めることはできない。強いて言えば、そのような綻びの発生の可能性を見過ごした企業側IT担当者にこそ、その責は問われるべきである。

 また、守秘性をもつ企業データについても、いったんユーザーのパソコンに保存されてしまうと、そのデータが外部の目に晒されてしまう危険性もある。この点については、もはや企業のVPN管理担当者の機能範囲を超えてしまっている。

 このように、綻びや危険性をともなうVPNチャネルが全米各地で続々と誕生しかねない局面を迎え、米国企業は企業イントラネットのデータ安全性が脅かされる状況に次第に敏感になっている。

 また、VPN敷設維持管理業務を自社管理から外部のサービス企業に委託する傾向を強めてきている。

 現在のVPN市場では、企業自身によるVPNの運用から発生する売り上げに比較して、サービスプロバイダがVPNの維持管理・運用から発生する売り上げ比重が非常に高い。

 内製および外注にかかわらず、安全かつ効率的なVPN環境を適正な費用で構築するために必要十分となる要件を確実に把握できるかどうかが、企業内IT担当部門の能力を査定するために最も重要な要素となってきている。(大平 光)
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