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NEC、富士通、IBM 好調な自治体向けビジネス

2002/08/12 16:26

週刊BCN 2002年08月12日vol.953掲載

 大手ベンダーの自治体向けサーバー・クライアントパソコンの販売が軒並み好調だ。これまでは、8月5日から稼働した住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)などのインフラ投資が中心的な案件だった。今後は、同ネットを基盤とした住民サービス向けの情報化投資が本格化する。すでに大手ベンダーを中心に自治体の新規需要を取り込み始めている。住基ネットによって、e-Japan構想の電子政府・自治体実現に向けた動きが立ち上がったことを受けて、ベンダー各社は「ここ1-2年は、自治体需要が落ちることはない」(ベンダー幹部)と強気の商談を進める。

住基ネットが後押し

■魅力的な自治体案件

 NECは、第1四半期(4-6月期)のIA(インテルアーキテクチャ)サーバーの販売台数が前年同期比で2ケタ近く伸びた。これは、「官公庁・自治体の情報化案件を確実に押さえた」(NECソリューションズクライアント・サーバ営業本部・山内久典営業本部長)ためだ。IAサーバー市場全体が前年に比べ約10%落ち込むなかで、頭ひとつ抜きん出た。

 富士通・パーソナル販売推進統括部プライマジー販売推進部・渡辺秋穂部長は、「住基ネット向けのIAサーバーの出荷がピークに達したのは昨年11-12月。この時期は、IAサーバー事業全体の約3割を官公庁向けに出荷した。今年度に入ってもこの比率は変わっていない。依然として官公需が好調だ」と話す。

 日本IBM・システム製品IAサーバー&PWS事業部の岩井淳文事業部長は、「民間企業の情報化投資が冷え込めば冷え込むほど、自治体需要の“強さ”が浮き彫りになる。国産ベンダー各社は安値覚悟で入札に臨んでいる」と、自治体需要を巡る競争が加熱していると指摘する。

 電子情報技術産業協会(JEITA)の調べでは、昨年度(02年3月期)、業界全体の官公庁など公共関係向けの売り上げ比率は23%を占め、製造業(30%)、サービス関係(25%)に次ぐ構成比となった。「民需の冷え込みが続き、住基ネットと連動した新規の情報化投資が順調に伸びれば、ここ1-2年の間、自治体など公共関係の構成比は、製造業に匹敵する30%程度に高まる可能性もある」(日本IBMの岩井事業部長)と予測する。

■サーバー需要に期待

 運用面で賛否両論ある住基ネットだが、コンピュータ業界にとっては、大口需要先であることには変わりない。住基ネットの構築が終わり、今後は同ネットを基盤とした新しい住民向けサービスに関する情報化投資が本格化する。

 富士通の渡辺部長は、「住基ネットを基盤とした住民向けの新規情報サービスシステムが今後の目玉。9月から具体的な商談を始める。さらに12月ごろまでに企画をまとめて来年度の予算で受注する」と鼻息が荒い。

 NECの山内本部長は、「住基ネットを活用したサービスでは、小さい町村でも最低サーバー5台、クライアントパソコン20-30台の需要が見込める。全国380社のパートナー販社と足並みを揃えて、自治体需要の取り込みに力を入れる」と語る。

 仮に全国約3000の自治体が5台ずつサーバーを購入したとして、単純計算で約1万5000台の需要が生まれる。年間の販売台数が約40万台のIAサーバーにとって、この需要は大きい。また、自治体が電子的な調達を始めれば、民間企業も、これに合わせた情報化投資をする必要性がでてくる。

「いつまでも公共投資を頼っていては先細りになる。自治体の電子化にともなう民間企業の新規案件を着実に開拓することが大切」(NECの山内本部長)、「自治体の情報化と民間企業の情報化をうまくリンクさせることが、今後の最大の焦点」(富士通の渡辺部長)と、ここ1-2年は、自治体の電子化を受けた民需の新規開拓がビジネスの目玉になると指摘する。
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