ニュース

長距離電話に新たな動き SBCパシフィックベルの新サービス

2002/09/30 16:29

週刊BCN 2002年09月30日vol.959掲載

 カリフォルニア州に拠点を置くSBCパシフィックベルが長距離電話サービスの実施を計画中である。米国では、同社を始めとするベイビー・ベルと呼ばれる会社が提供できる電話サービスは、そのエリアが基本的に州内か地域が限定されていた。それだけに、同社の計画については賛否両論の意見が出ている。

 SBCパシフィックベルは、9月19日にカリフォルニア州政府の一機関である公共サービス委員会から長距離電話のサビース実施の許可を得たと発表した。これが本当に実現すれば、カリフォルニア州に在住する住人は同社のサービスだけで、近距離と長距離の両方のサービスの利用が可能になる。消費者側は、支払い手続きやカスタマーサービス部門の利用も1本化されるので、この点では、多いに便利になることには間違いない。

 実は同社は、今年に入ってから数か月間の間、DSLのサービスでカリフォルニア州で一人勝ちというポジションを保持している。これは昨年末に同じくカリフォルニア州に本社を置いていた、エキサイト・アットホームが倒産し、ユーザーがパックベル(カリフォルニア州の住民は同社をこのように呼んでいる)に流れた、という事情があったからだ。

 それだけに、今後はブロードバンドやワイヤレスも含めたすべてのコミュニケーションのサービスで同州のマーケットを支配してしまう、いわゆるモノポリの傾向が強くなるのでは、という懸念も住民の間では漂い始めている。

 長距離電話サービス会社大手のワールドコムが倒産を発表してから数か月が過ぎたが、米国人は今になって「いつでも繋がる電話回線」や「頼れるインターネットアクセス」、そして「10分以上の待ち時間がない、迅速なカスタマーサービス」といった当たり前の要素を求めて、各社のコミュニケーションサービスを比較検討しているステージに戻ってきた。

 前出のエキサイト・アットホームの件も含めて、ある日突然会社が倒産し、サービスがなくなってしまっては、それこそ生活に支障が出る、という問題を身をもって体験した一般市民の気持ちがそうさせているのである。

 しかし、業界のモノポリ傾向が進めば進むほど、今後の料金の値上げやサービスの低下もありうるだけに、不安もぬぐえないようである。

 現段階では、SBCパシフィックベルはまだカリフォルニア州の法律委員会からこの長距離電話サービスに関する許可を得ておらず、今後、同委員会と話をしながら、結果を待つことになる。同社はその展開を見ながらも、今すでにこの新しいサービスに向けて、自社のインフラ強化を着々と準備している最中であるという。

 いずれにしても今後、同社が検討するべきポイントは、この長距離電話サービスや、ブロードバンド、ワイヤレスをも含んだ、パッケージサービスの開発と考えられる。(飯田仁子)
  • 1