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XML対応オフィスを出す マイクロソフトの賭け

2002/11/04 16:37

週刊BCN 2002年11月04日vol.964掲載

他ソフトとのデータ交換も可能に

 米マイクロソフトはこのほど、人気事務用ソフトスイート「オフィス」の次期バージョン「オフィス11」のベータ版をリリースした。業界標準言語のXMLへの対応が同バージョンの最大の特徴となるが、XMLで競合ソフトとのデータ交換が可能になり、他社ソフトにユーザーが乗り換える可能性があるわけで、同社にとって大きな賭けになりそうだ。

 マイクロソフトによると、次期「オフィス」は2003年半ばに正式発売の予定。今回のベータ版は社内テスター6000人、社外テスター6000人に配布された。また年明けにより大規模なテスト配布を実施する計画という。

 次期「オフィス」は、XMLに対応させることで、CRM(顧客関係管理)や会計などほかのソフトとの自由なデータ交換を可能にするという。例えば、次期「オフィス」の新機能「スマート・ドキュメンツ」を使って「ワード」や「エクセル」などのソフトで出金伝票を作成する際に、インターネット上のクレジットカードや電話料金の明細表のデータを思い通りの形に並び替えて「ワード」や「エクセル」上に簡単に取り込めるようになる。

 また「ワード」や「エクセル」で提出した出金伝票上などのデータは、会社のバックエンドのシステムの形式に自動的に並び替えて取り込めるようになる。

 XMLを使用することで、ネット上から文書上へ、さらにバックエンドのシステムへといったデータ入力や、コピー、貼り付けといった作業が不要になるうえ、入力ミスもなくなるという。マイクロソフトはこれで生産性の大幅な向上が期待できるとしている。

 同社は「オフィス」を「.NET構想」の1部に位置づけているもようで、「オフィス」をXML対応の各種ウェブサービスのクライアントソフトにしたいようだ。

 しかしほかのソフトやウェブサイトとのデータ交換が自由自在になるということは、競合ソフトとのデータ交換も自在になるということ。「オフィス」は現在、事務用ソフト市場の90%以上のシェアを誇っている。これは「ワード」や「エクセル」の独自データ形式が事実上の業界標準になっているからでもある。

 次期「オフィス」でXML対応を進めれば、シェアを拡大しつつあるサン・マイクロシステムズの事務用ソフト「スターオフィス」とのデータ交換が一層容易になるわけで、「スターオフィス」のさらなるシェア拡大を許す結果にもなりかねない。機能を拡大しなければゆっくりとシェアを侵食される。XMLで機能は拡大できるが、ユーザーの囲い込みが困難になる。

 こうしたリスクを回避するために同社は、今後「SQLサーバー」や「エクスチェンジ」などのサーバー側のソフトと「オフィス」との連携機能を強化させたり、「オフィス」のブランド力を高めるキャンペーンに打って出るものと予想されている。

 「オフィス」はマイクロソフトの売上高の3の1を占める主力商品。今回の賭けが吉と出るか、凶と出るかで、同社の今後に大きな影響を与えそうだ。(湯川鶴章)
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