IT需要が冷え込むなかにあっても、ADSLの急速な普及、IP電話サービスの本格的な立ち上がり、カメラ付き携帯電話のヒットなど、ブロードバンド時代の到来を印象づける製品、サービスが2002年は話題を呼んだ。屋外で手軽に無線LANが利用できるようになったことも、注目されよう。一方、長引くIT不況を乗り切るため業界各社はリストラに取り組み、その収益改善効果も次第に表れ始めた。新生日本ヒューレット・パッカード(日本HP)、エイデン・デオデオを中心とするエディオンの発足も記憶に新しい。e-Japan戦略が加速するなか、8月には住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)も稼働開始した。

IT不況に立ち向かった業界各社

【10大ニュース 国内編】
・エディオン誕生で流通業界再編へ
・新生日本HPがスタート
・住基ネット、ついにスタート
・激化するADSL顧客獲得競争
・カメラ付き携帯電話がブレイク
・みずほで未曾有のシステム障害
・無線LAN屋外での利用進む
・主力商品になるか、タブレットPC
・大きく変貌する“電気街”秋葉原
・電機大手、リストラ効果ジワリ


エディオン誕生で流通業界再編へ

 3月29日、エイデンとデオデオが共同持株会社「エディオン」を設立した。2社が事業統合した意図は、新しい流通ビジネスへの対応を図るためだ。

 家電パソコン流通業界では、ヤマダ電機やヨドバシカメラなどの大型量販店の出店攻勢により、シェア争いに拍車がかかっている。

 エディオンを設立することにより、2社が行ってきた継続的な地域密着型のチェーン展開に加え、業務提携した企業同士の統合効果を追求。ヤマダ電機やヨドバシカメラに対抗できる体制づくりを目指す。

 エディオン連合の動きとしては、9月19日に、ベスト電器が連合への不参加を表明する一方、新しくサンキュー、デンコードーが加入。これによって、上新電機、ミドリ電化との新5社連合が発足した。将来は、エディオンの100%出資子会社として関東エディオンの設立を計画しており、関東地区への出店を加速。全国網体制を確立する構えだ。

 今後は、全国網体制における5社連合各社の守備範囲を明確化することと、地域密着型の店舗づくりを徹底できるかが課題といえよう。

 エディオンの今年度の第1期連結実績(3月29日―9月30日の変則決算)は、売上高が2227億8400万円、営業利益が25億3300万円、経常利益が44億4500万円、当期純利益が12億1400万円となった。今年度通期(2003年3月期)の業績予想は、売上高が4450億円、経常利益が89億円、当期純利益が25億円を見込む。

新生日本HPがスタート

 米国では5月に合併したヒューレット・パッカード(HP)とコンパック・コンピュータだが、日本はそれから遅れること6か月。11月1日付で新生日本ヒューレット・パッカード(日本HP)としてスタートを切った。「IBMという高くて大きな山に勝つには、単独ではできない。新生HPは技術面でも世界のリーダーを目指す」(高柳肇社長)と、IT業界の王者に返り咲くための合併である。

 しかし、日本では決して楽観視できる状況にない。合併が決定して以降、統合の準備は先行して進み、実際の法人統合前の8月から営業面での連動をスタートするなど、合併によるロスを少なくする努力が続けられた。それにも関わらず、両社の製品をバラバラに販売してきたディーラーやディストリビュータからは厳しい声があがる。

「やはり、合併が具体的に決まるまで、商談が落ち着いてできなかった。製品面でも、担当スタッフについても、合併後はどうなるのか不明瞭だったために、われわれ流通側でも落ち着いて商談ができなかったし、ユーザーからも導入を見合わせるという声が出た。この1年はHP製品の販売においては大きなロスとなってしまった」

 実際のシェアを見ても、IDCジャパンの調査によれば、2002年第3四半期(7-9月期)の国内サーバーシェアにおいて、日本HPのシェア(金額ベース)は15.0%と国内3位にあるものの、前年同期に比較すると2.1ポイント下落している。

 失われたシェアを取り戻すために、日本HPには日本市場に向けた一層の事業強化が求められる。

住基ネット、ついにスタート

 住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)が8月5日、法律の規定通りに運用を開始した。稼動目前になって稼動延期を求める声も飛び交うなど議論が活発化。地方自治体のなかには福島県矢祭町などのように住基ネットへの接続から離脱するところや、横浜市のように住民による選択性を導入するところも出た。セキュリティや個人情報保護への関心が高まるなか緊張感のある船出になったことで、稼動後これまでのところは大きな混乱は生じていない。

 今年6月の通常国会で住基ネット稼動の前提条件と言われていた個人情報保護法案が“メディア規制法案”との批判から成立せず、住基ネット稼動に間に合わなくなった。しかし、総務省では住基ネットに関する法律によって十分に個人情報保護への対応が可能だとして、予定通りの稼動を開始。新たに外部による監査制度を導入するなど、安全対策も強化された。

 住基ネットは、顔の見えないインターネットの世界で、全国共通で本人確認を行えるようにする仕組みの基盤となる。

 12月の臨時国会では、継続審議となっていた行政手続きをオンラインで行えるようにするためのオンライン化3法が成立。住基ネットを利用した公的個人認証の仕組みを構築することがようやく可能となった。来年8月には住基カードの発行も始まる予定で、いよいよ電子政府・自治体が本格的に動き出すことになる。

激化するADSL顧客獲得競争

 2002年11月、ADSL加入者数は、500万の大台を突破し、511.7万回線に達した。今年9月末までは、およそ30万回線ずつ増えたが、10月は41.6万回線、11月は47.8万回線と月間加入者数が拡大。12月も50万回線近く増える見込みで、年内に550万回線を超える勢いだ。

 CATV回線でインターネット接続をする利用者が約180万件あることから、合計すると、02年末のブロードバンド利用者は730万人規模に成長したことになる。

 ADSLが伸びる背景には、ヤフー!BBの勢力拡大がある。ヤフー!BBは、ADSLの月間加入者数約40万回線のうち、過半数を占め、圧倒的な強さを見せる。

 人気の理由は、月額2280円(プロバイダ料込み)という低額・常時のインターネット接続に加え、全国および米国への電話が3分間7.5円の料金で済むインターネット電話「BBフォン」の存在だ。既存プロバイダは、自前で回線をもっていないため、BBフォンの対抗策が打てずにいる。

 また、既存プロバイダが回線面で依存するKDDIや日本テレコム、NTTコミュニケーションズなど既存キャリアは、自分たちの首を絞めることにもなりかねないインターネット電話に消極的で、大胆な施策を打ち出せない。

 これに対して、ヤフー!BBは、自前のADSL回線を使い、インターネット接続、電話、テレビ放送など統合的なサービスに仕立てて追い打ちをかける。来年は苦境の既存プロバイダが、ヤフー!BBに、どう反撃するのかが焦点となる。

カメラ付き携帯電話がブレイク

 携帯電話市場の2002年は、カメラ付き携帯電話が一大ブームを築いた年となった。普及率の上昇とともに携帯電話市場全体が頭打ちになるなか、カメラ付き携帯電話は11月下旬で、国内販売台数が1000万台を突破。これは携帯電話市場全体の約17%を占め、携帯電話を所有する6人に1人が使っている計算になる。

 キャリア別では、カメラ付き携帯電話でトップシェアを誇るJ-フォンが、11月下旬に販売台数700万台を突破した。増加ペースは月50万台以上で推移する。

 J-フォンのカメラ付きのラインアップは20機種を数え、同社の携帯電話の50%以上が対応している状況だ。

 遅れをとったNTTドコモも、6月に参入。こちらは急速に売り上げを伸ばし、11月下旬に300万台を突破した。4月に販売を開始したKDDIは、5機種のラインナップを揃え、133万台と2社に続いている。

 一方、NTTドコモの次世代携帯電話「FOMA(フォーマ)」は伸び悩み、当初は来年3月末までに138万加入を目標としていたが、約15万加入にとどまっており、目標を32万加入に大幅に下方修正した。カメラ付き携帯電話に需要を大きく取り込まれた格好となった。

 来年には100万画素といった高画質モデルのカメラ付き携帯電話が登場する予定もあり、来年もカメラ付きが市場を席巻しそうな気配。好調に売り上げを伸ばすデジタルカメラ市場にも、脅威の存在になりそうだ。

みずほで未曾有のシステム障害

 新年度入りの4月1日。春のうららかな天気とは裏腹に、みずほフィナンシャルグループは大混乱に陥った。

 第一勧業、富士、日本興業の3銀行が経営統合し、新銀行開業のテープカット式典が行われていたその頃、大規模なシステム障害が表面化。旧富士銀以外のATMで、旧富士銀のキャッシュカードで取引ができなくなると同時に、旧富士銀のATMでは旧第一勧銀などのカードが使えない事態に至った。

 同時に、現金が出てこないにもかかわらず、預金残高だけが減るトラブルが147件発生した。
この混乱は4月半ばまで続き、口座振替処理の遅延などが連続的に発生。二重引落事故、二重送金事故などへの対応に行員は追われた。

 IT化で最先端を行くはずの金融界に、なぜこのような未曾有のシステム障害が発生したのか。その後の検証から、システム統合という難題事業にもかかわらず、経営トップのシステムに対する無関心さと専任担当者の不在、大規模プロジェクトにおけるPM(プロジェクトマネジメント)の欠如といった諸問題が改めて浮き彫りになった。

 この責任を取り同グループでは、前田晃伸・みずほホールディングス社長、工藤正・みずほ銀行頭取、斎藤宏・みずほコーポレート銀行頭取の経営トップ3人が役員報酬の月額50%を半年間カット。

 また、3月末まで経営統合を指揮していた西村正雄、山本惠朗、杉田力之の前経営トップ3氏も特別顧問を辞任した。

無線LAN、屋外での利用進む

 2002年は、無線LAN接続サービスで大きな進展があった。ADSLシェアで勢いをつけるヤフーBBが、マクドナルドやスターバックスコーヒー、ミスタードーナツの各店舗で無線LAN設備の取り付けを始めたのに対し、NTTコミュニケーションズも月額1600円でモスバーガーやミニストップなどの店舗に無線LANの提供を始めた。

 ADSLやCATVなど“屋内でのブロードバンド接続”に対し、無線LANは“屋外でのブロードバンド接続”を実現する仕組みだ。多くの人が利用するファーストフード店などに無線LANの設備が増え始めたのは、屋外におけるブロードハンド接続の大きな一歩だと言える。だが、実際の使い勝手については、まだ今後改善の余地がある。

 まず、マクドナルドなどの店舗側から見れば、無線LANによって、顧客の滞留時間が長くなり収益性が悪化する。

 また、現行の仕組みでは、ヤフーBBやNTTコミュニケーションズなど、通信事業者同士の互換性がまったくない問題もある。利便性を高め、利用者を増やさないことには、無線LAN事業者の収益も上がらない。

 とはいえ、良い影響も出始めている。パソコンメーカー各社は、屋外での無線LANサービスが始まると同時に、自社のノートパソコンに無線LANを内蔵する比率を拡大。無線LANサービスを広める下地づくりに積極的に動き始めた。03年、無線LANサービス同士の相互接続などの利便性が高まれば、普及に弾みがつく可能性も十分にある。

主力商品になるか、タブレットPC

 11月7日から順次、パソコンメーカー各社がマイクロソフトの「ウィンドウズXPタブレットPCエディション」を搭載したタブレットPCを発売した。

 マイクロソフトでは、1992年以来、10年間にわたり「ペンコンピューティング」の研究開発に取り組んできた。その経験を生かし、モバイル用CPUの登場や、液晶ディスプレイ、デジタイザ技術の発展、ブロードバンド、ワイヤレス技術の急速な普及など、テクノロジーの一段の進歩を武器に「ウィンドウズXPタブレットPCエディション」を開発。ハードウェアメーカー9社とソフトウェアメーカー33社が製品の発売に名乗りを上げることとなった。

 電子情報技術産業協会(JEITA)の調べでは、今年度上半期(4-9月)の国内パソコン出荷実績は台数ベースで前年同期比10%減の455万5000台、金額ベースで同7%減の7743億円となった。通期の見通しは、当初、台数ベースで1110万台(前年度比4%増)、金額ベースで1兆8000億円(前年度並み)を見込んでいたものの、台数で1000万台強(前年度比約6%減)で、金額で1兆6500億円(同7%減)と下方修正した。

 市場低迷の要因は、「パソコンの新製品に新鮮味がなくなったことが要因」といった見方が強い。タブレットPCの開発は、メーカー各社が低価格やシェアを奪い合う戦略では生き残りが難しく、なおかつ現状のままでは市場の低迷が続くことに危機感をもっていることの表れといえる。

大きく変貌する“電気街”秋葉原

 東京・秋葉原の街が大きく変貌を遂げつつある。ラオックスが中央通りに面したミナミ無線電機の跡地を借り、ゲームソフトやホビー製品などを集めた新店舗「ASOBITCITY(アソビットシティ)」を10月10日にオープン。売り場面積5000平方メートルのスペースは、日本最大規模のエンタテインメント館となる。

 中央通りの一角は、ヤマギワソフト館をはじめ、カクタソフマップ、ソフマップ本店アミューズメント館、メッセンサオー本店など、CDやDVD、ゲーム関連のソフトを販売する店舗が多いのが特徴だった。大型エンタテインメント専門館の登場により、ますますエンタテインメント色が濃くなったといえよう。

 秋葉原電気街の歴史を大きくたどると、部品の街から家電の街、その後、パソコンの街へと大きく変貌を遂げてきた。だが、主流の商材となるパソコン本体が前年割れをしている状況だ。パソコン販売は、用途提案や収益性が高い商材と合わせて販売できるような体制を作ることが重要となる。

 中央通りの一角を「エンタテインメント地域」として定着させる取り組みは、メーンカルチャーのパソコン販売だけでなく、ホビーやゲーム関連ソフトなどのサブカルチャーをメーンカルチャーへと変える可能性が高い。しかも、街自体の集客率を高めることにもつながりそうだ。

電機大手、リストラ効果ジワリ

 2001年度は業績の下方修正が相次いだ大手電機メーカーだが、02年度も景気低迷の影響で売り上げは伸び悩んだ。9月中間期の連結売上高は、日立製作所が前年同期比0.5%減の3兆9164億円、NECが同11.9%減の2兆1738億円、富士通が同9.9%減の2兆1503億円。

 一方、海外向けパソコンや映像機器などが好調だった東芝は、同5.0%増の2兆6350億円だった。総じて売り上げ面は、依然厳しい状況にあるものの、前年度のリストラ効果が出てきたためか、損益面では黒字に転じる企業が目立った。そんな中にあって、厳しい決算を強いられたのが富士通。営業損失232億円、純損失1474億円と、1社だけ赤字決算となってしまった。このため、昨年に引き続き大規模なリストラを予定しており、事業構造改革により通期での黒字転換に望みをかける。

 NECは決算面では黒字に転じているが、11月1日付で半導体事業を分社化。社長には長年パソコン事業を統括してきた戸坂馨氏が就任した。また、12月3日には“NEC中興の祖”で相談役の関本忠弘氏を解任するなど、社内体制が大きな変革期に入ったことを示すニュースが続いた。

 日立は、今年4月に米IBMとストレージ分野で提携を行うことで合意したが、6月には日立がIBMのHDD事業を買収すると発表。当初は合弁で新会社を設立し、3年後には日立の完全な子会社とする計画だった。日本だけでなく、世界のストレージ市場にとってもインパクトのある大きなニュースとなった。