米国の小説や音楽などの著作権保護期間を20年延長した「ソニー・ボノ法」が表現の自由を定めた憲法に違反するかどうかが争われていた問題で米最高裁は15日、同法は合憲との判断を下した。これでネット書籍出版者らの求める引用、流通、創作の自由が厳しく制限されることになる。判決は何を意味するのか。

 サウンドムービーの誕生から今年で75年が経つ。映画の故郷・アメリカにおける著作権保護期間は元々、企業所有の場合は作品発表から75年、個人所有の場合は作者の死後50年だから、本当なら今頃は誰でも自由に初期の名画を上映し、ミッキーマウスを借用し、ガーシュインの楽曲を奏で、フィッツジェラルド作品をドラマ化できているはずだが、そうはならなかった。1998年に米議会が保護期間を20年伸ばす延命措置を施したからである。

 ミッキーの寿命をいきなり20年伸ばしたこの法律は、俗に“ミッキーマウス保護法”と呼ばれる。延長停止でディズニーやAOLタイム・ワーナーなど大手娯楽業界が失う著作権料収入は推定約59兆円にものぼるとなれば、この呼び名が最もふさわしい。事実、ロビー活動の主軸はディズニーが担った。

 原告は、フロストの詩の出版を希望するエリック・エルドレッド氏はじめ教会コーラスの監督、オーケストラ楽譜の出版社、映画修復業者、版権切れ作品の出版が主業務のドーバー・パブリケーションズほか。論戦はスタンフォード大法学部のローレンス・レッシグ教授が取りまとめた。

 最高裁は、「合衆国憲法は議会が著作権保護期限を規定する余地を大幅に認めている」として7対2の多数決で合憲判断を下し、結果は年間4億ドルの収入源を死守したいハリウッドの全面勝利に終わった。「新しくリッチなコンテンツがパブリックドメインに加われば技術革新が刺激される」(インテル)と考えるハイテク業界、インターネット出版社、一般消費者にとっては大きな痛手。この判決をLAタイムズは「ハリウッド的結末」と皮肉り、サンノゼマーキュリーは「泥棒憲法」とこき下ろした。

 因みに、アメリカが著作権保護期間を延長するのは今回が初めてではない。1790年に14年延ばしたのを皮切りにこれまで幾度となく繰り返しており、「このまま永久に伸びるんじゃないか」とか「永久マイナス1だろう」などのジョークが出回るほどだ。

 ただ今回はウェブ出版やオンライン配信が流通するデジタル時代だけに、これまでにない重要な意味をもつ判決となった。

 20年延期の適用存続が正式に決まったことで、米国の著作権保護期間はヨーロッパと横並びになった。この「ヨーロッパ並み」というところがポイントで、まさか巨大企業からの圧力に立法府もろとも屈したとは言えないから裁判官もこの点は大いに強調した。

 逆に言うと、欧州が延長を決めない限り“次”はないわけで、それが単なる付け焼刃の議論かそうでないかが分かるのは今から更に16年後のことだ。(市村佐登美)