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米国の光ファイバー 日本より100倍高い

2003/02/10 19:12

週刊BCN 2003年02月10日vol.977掲載

BBラストワンマイル大幅遅れ

 ブロードバンド(BB)市場において、地域電話オフィスと一般世帯を結ぶ通信手段である「ラストワンマイル」への最終主役として、以前から注目を集めていた光ファイバーがいよいよ一般市場へ普及し始めた。日本の状況に比べると、米国のBB事情はお寒い限りだ。世界のBB市場で質量共に断トツの首位に位置する日本の近況が、米国IT業界の口数を少なくさせてしまっている。

 世界のBBラストワンマイル市場の拡大は、米国におけるケーブルのBB化、および韓国におけるADSL市場の爆発がその引き金になったという理解が一般的であろう。ダイアルアップによるインターネットアクセスがまだ世界中で一般的だった頃、米国家庭に広く普及している同軸ケーブルを利用した1Mbpsのラストマイル補強は、世界最先端として当時は注目を集めたものだった。

 また、数年前に国家的経済危機に見舞われた韓国が、その打開策の1つとして国家規模で進めたADSL普及政策が見事に花を咲かせた結果、韓国のADSLラストワンマイル敷設件数は常に世界一を維持し続けている。

 日本では、光ファイバーによるラストワンマイル補強が国策として進められてきた関係もあってか、ADSL市場拡大には一歩出遅れた感もあったが、ヤフー!BBの市場拡大策がきっかけとなって、今では韓国に次ぐADSL大国としての地位を獲得している。

 最近では、100Mbpsの性能を誇るNTTのBフレッツが、光ファイバーによるラストワンマイルの選択肢として急速にBB市場での勢いを増しつつあり、先行するADSL勢力との間で熾烈な価格性能戦を繰り広げている。

 民間光ファイバー企業の市場参入により、光ファイバーのラストワンマイル価格は先行するADSLに拮抗する水準にまで下がりつつあり、消費者にとって魅力あるBB市場が成長しつつある。

 一方、ITで世界を先導する米国のBB事情は愕然とするものだ。

 ケーブルは家庭へ1.5Mbpsのインターネットアクセスを提供してはいるものの、そこに新しい技術革新の波はまだ到来していない。ADSLはいまだに1.5Mbpsあたりをうろうろしている。光ファイバーにいたっては、日本のBフレッツと同程度の環境をシリコンバレーで敷設すると月額5000ドルの費用が発生してしまう。

 IT発祥の地としてその勇名を馳せてきた米国は、ことBBラストワンマイルに関しては、とりあえず現在のところはもはや見るべきものは何もないといった状況である。ITバブル華やかし頃、米国の通信業者は競って光ファイバーの敷設に邁進し、結局はその投資負担に耐え切れず倒産の憂き目にあった。

 大都市間幹線路線に業者間の敷設競争が集中したことが、市場破綻の原因とされているが、市場全体を精緻に見通す計画性が微塵も見られなかったこの状況が米国の特質を見事に体現していると言える。(寺原 孝)
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