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日本HP “デル攻略”で流通網を強化

2003/02/17 19:12

週刊BCN 2003年02月17日vol.978掲載

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP、高柳肇社長)が、再びデルコンピュータ攻略に向け手綱を締め始めた。同社は中小の販売会社(リセラー)を対象にした直接取引による卸売り「hpダイレクトリセラープログラム」を2月10日から開始した。この施策により、急成長を続けるデルに対抗する流通網を築く意向。合併作業でもたついた印象のある日本HPだが、1月にはパソコンやサーバーの価格を最大37%引き下げる価格改定をしており、「国内の中小企業向け販売で唯一、デルに対抗しうる勢力になる」(日本HP)と、デル追撃を始めた。

リセラー対象に直接取引

 日本HPは、(1)パソコンやサーバーの値下げや、(2)注文を受けてから5営業日以内に組み立てて納入するBTO(受注生産)体制に加えて、(3)中小リセラーに直接取引の枠を新設することで、デルのシェア拡大を阻止する。

 これまで、値下げや納期ではデルに対抗できていたものの、流通施策の面では、どうしても勝てなかった。 デルの中小企業向け直販は、主にウェブや電話によるものと、「固定客」と呼ばれる特定リセラーを介した販売の2種類がある。

 エンドユーザーが「デルが欲しい」と出入りのリセラーに要望すれば、リセラーは選択の余地はなく、デルから商材を引いて納入する。デルでは、商品の流れを管理しており、エンドユーザーが顧客であることは言うまでもなく、これら経常的に購入するリセラーを固定客として販売促進の原動力の1つにしている。

 これを受けて、日本HPでは、全国約1万5000社あると言われるリセラーに、「選択肢はデルだけでなく、HPもある」と訴えるために、今回の「hpダイレクトリセラープログラム」を始めた。

 現在、HP製(旧コンパックコンピュータ製を含む)のパソコンやサーバーを取り扱っているリセラーは、約3000社に過ぎない。

 日本HPでは、これら約3000社を「二次販売店」に位置づけ、大手一次販売店(ディストリビュータ)を介して製品を卸販売していた。一次店には大塚商会、ダイワボウ情報システム、ソフトバンクBBなどが名を連ねる。

 だが、これまでの一次販売店を経由した販売では、残り1万2000社のリセラーの開拓ができない。このため、今回は、取引実績がないリセラーを主な対象とした直接取引に踏み切った。

 日本HPでは、「現在、われわれのPCサーバーの台数シェアは約15%。これを来年度(2004年10月期)には、2倍の30%に拡大させる。このためには、中小顧客がデルに流れるのを食い止め、全国のリセラーを味方に引き入れる必要がある」と話す。

 今回の「hpダイレクトリセラープログラム」は、「流通を介さないデル型の中抜き策だ」との声もある。

 日本HPでは、「われわれは、ディストリビュータやリセラーの顧客を奪うことは決してない。デルに対抗して、なおかつ、販路のなかに流通を組み込む唯一の仕組みが、当社の考え出した流通施策だ」としている。

 HP製品の大手流通卸である大塚商会は、今回の日本HPの施策について「当社の卸事業には、まったく影響ない」とし、ダイワボウ情報システムは「コメントできない」と話す。
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