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コダック、オンライン広告中止 バナーに頼らずネットユーザー取り込む

2003/03/10 19:14

週刊BCN 2003年03月10日vol.981掲載

 米国企業のオンライン広告に対する取り組み方に変化が現れている。バナー広告に音声や動画を加えるこれまでの手法の延長線上の試みも健在だが、一方でバナー広告に頼らずにネットユーザーを取り込もうという新しい動きも活発化している。インターネットは、テレビを越える広告媒体に脱皮できるのだろうか。

 「広告予算を新手法へ移行するために、経営者を説得する方法」――。昨年11月にニューヨークで開催されたオンライン広告業界のカンファレンス「アドテック」の中で行われたセミナータイトルの1つだ。米企業がバナー広告とは違う新手法に力を入れ始めた証拠で、事実、カメラ大手のイーストマン・コダックは、ポータルサイトなどにオンライン広告への出稿を止めたという。

 同社のシャロン・デルマン最高マーケティング責任者(CMO)は、「バナー広告は、雑誌や新聞の広告の発想から抜けきれない広告手法。ネット上で効果がないことは実証済み」と言う。

 代わりに同社は、デジタルカメラの初心者向けサイト、中級者向けサイト、プロ向けサイトをそれぞれ立ち上げ、同社製品にこだわることなく、一般的なデジカメ情報を提供している。またeマガジンという写真愛好家向けオンライン雑誌も刊行した。

 同社によると、こうした独自コンテンツサイトの方がオンライン広告よりアクセス件数で5倍も費用対効果に優れていることがわかったという。

 アドテックで基調講演を行った広告業界の著名コンサルタントでモデム・メディア社のG・M・オコネル最高経営責任者は、インターネットの登場で企業と消費者の接点が増えていると指摘する。

 これまで企業は、広告を打って商品名を広め、販売促進キャンペーンで消費者の購買意欲を高めてきた。平常時と購入時の2つの時点でしか消費者と幅広く接することができなかったわけだ。しかし、ネットという新しい媒体が別の新しい接点を提供する、と主張する。

 その1つが購入前の商品情報収集時。米国ネットユーザーの65%は、商品を購入する前にネットで情報を収集し、どの商品が良いかを決める。自動車の購入の際には73%が、まずネット上で情報を収集するという。この情報収集の際に、広告を打てばより高い効果が期待できるわけだ。

 もう1つの接点は、商品購入後。コダック運営の各種サイトはカメラ購入後の消費者と接点を持とうというわけだ。同社のデルマンCMOは「(これらのサイトが理由で)直接売り上げが伸びることはないが、コダックファンが増えれば長期的には売上高に貢献するはず」と語っている。

 テレビが登場した当初のCMは、アナウンサーがラジオCMを読み上げるというものだった。テレビらしいCMが登場するのに10年かかったといわれる。ネットという新しい媒体に合った広告手法がいよいよ誕生しようとしているのかもしれない。(湯川鶴章)
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