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情報処理振興事業協会 ソフト開発支援、最後の公募を開始 2004年には独立行政法人へ

2003/03/10 19:14

週刊BCN 2003年03月10日vol.981掲載

2004年には独立行政法人へ

 情報処理振興事業協会(IPA、村岡茂生理事長)が、ソフトウェア開発支援事業で最後の公募を始めた。公募は来年度分で、総予算額は約74億円になる見込み。IPAは今年12月末で解散し、2004年1月5日から独立行政法人「情報処理推進機構」として生まれ変わる。今回の公募内容は、独法化後を見据えたものになっており、より生活に密着した実用的なソフト開発を促進する。近藤隆彦専務理事に話を聞いた。

 ――独法化して、IPAはどう変わるのか。

 近藤 これまでのように、許認可で国が一挙手一投足を監視するという状況ではなくなる。理事長以下、幹部の裁量権が拡大し、事後的な評価に移行する。

 具体的には、経済産業省の大臣が4年間の“中期目標”を策定し、これを達成するよう事業を進める。現在、中期目標の内容を詰めている段階で、年内にはまとめる。

 ただ、ITの世界は変化が激しいため、実際には中期目標のなかの年次計画で柔軟に対応する。ソフト開発などにおける新しい需要は、この年次計画で吸収していく。いずれにしても、開発支援対象を絞り込み、社会に貢献できる具体的な成果をあげられる分野にしか投資しない。

 ――来年度のソフト開発支援事業の公募にかかる総予算額が約74億円で前年度並みだが、独法化後の予算は、どうなるのか。

 近藤 特殊法人の予算を減らすという大方針の下では、今後、着実に予算は減る。少なくとも、これ以上増えることはない。今話題のグリッド・コンピューティングの研究開発予算についても、来年度の国の予算約28億円のうち、IPAに下りてくる予算は2億円にすぎない。残りは経産省が自分で使うということだ。

 こうした状況下では、開発支援の対象範囲をこれまで以上に絞り込む方法で対処するしかない。

 例えば、「生産性の向上」のためのソフトは、国費を使って投資する必要はない。民間に任せればいい。それよりも、立ち後れている医療や福祉、教育、セキュリティ分野のソフト開発を国として促進する。

 開発支援事業の件数も、昨年度は約400件ほどあったが、今年度は約300件に絞り込んだ。来年度はさらに絞り込む。

 しかし、こうして範囲を絞って公募をかけても、実際はセキュリティなど人気がある分野に応募が集中しがちだ。これを是正するためには、IPA側が、何に対して支援したいかをより明確にし、IPAの戦略をこれまで以上に前面に押し出すことが大切である。

 ――見極めの基準は何か。

 近藤 国として、需要が見込める分野に対してのみ支援するということだ。

 これは当然、今後、国として重視している分野であることを示しているので、成長分野になり得るということだ。ただ、そういう分野がどれかということについて、国としても、難しい選択を迫られることになる。

 ――情報処理技術者試験が情報処理推進機構の管轄になるが、受け入れ準備はどうか。

 近藤 現在、日本情報処理開発協会が請け負う情報処理技術者試験は、新生IPAである情報処理推進機構が引き継ぐ。年間80万人が受験する大規模な技術者試験で、引き継ぎ作業に追われている最中だ。

 この試験を、年に2回、春と秋に実施することから、IPAの独法化が来年1月からと、不規則な時期になった。受験者を混乱させないためにも、秋の試験が終了してから、独法化することにした。
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