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PHS「小霊通」、中国でブームに

2003/03/24 19:14

週刊BCN 2003年03月24日vol.983掲載

 今年末までには2億5000万に達する中国の移動電話加入数。日本の総人口の2倍にも相当する巨大な移動体通信ネットワークが誕生することになる。そのなかで、とくに物議をかもしているのが「小霊通」(XiaoLingTong)と呼ばれるPHS方式を採用したワイヤレス・ローカル・ループシステムによるサービスだ。

大都市流入で業界再編も

 中国版PHS「小霊通」は、中国の固定電話二大事業者である中国電信(チャイナテレコム)と中国網通(チャイナネットコム)がサービスを提供している。現在、この小霊通は1000万加入以上といわれており、今年末までには2000万以上となる。この小霊通が注目される要因にはいくつかの側面がある。

 まず1つに、移動体通信を独占してきた中国移動(チャイナモバイル)と中国聯通(チャイナユニコム)にとって、小霊通が大きな脅威となっていることだ。「小霊通の勢いはもはや止めることはできない」(中国聯通関係者)ために戦略転換も迫られている。

 また、この小霊通の成長度合いが、一貫して中国当局が渋ってきた中国電信と中国網通への移動体通信ライセンス付与と直接関わってくることも重要だ。現在の爆発的な普及が続くようであれば、小霊通の業務停止や急ブレーキを条件に中国電信と中国網通へライセンスが付与される可能性もある。

 更に重要なことは、小霊通の市場ニーズが当局の政策転換を迫りつつある点だ。中国当局では、小霊通を過渡期の技術としてとらえており、移動体通信では第三世代(3G)携帯電話の普及に取り組みたいために、小霊通の北京や上海、広州などといった大都市での業務展開を禁止していた。IT統括の中央省庁である情報産業部の呉基伝部長(大臣)も、「小霊通の普及は奨励しない」と明言している。

 しかしユーザーの強い要望もあって、小霊通の大都市解禁が実現しそうだ。今年の4月には広州で、5月には北京や上海でも全面的に規制が緩和されると見る向きもある。

 なぜここまで中国でPHSに人気が集まるのか。最も大きな要因は課金システムにある。中国の通常の携帯電話は、電話をかけた側と電話を受けた側の双方に課金される。しかし、小霊通では単方向課金となっている。小霊通は1分0.2元ほどが相場だが、携帯電話ではかけ手と受け手にそれぞれ0.4元もかかってしまっている。

 もっとも、小霊通にも弱みはある。ローミングに限界があって、サービス範囲が限られていること、SMS(ショートメッセージサービス)など高付加価値サービスが技術的にサポートしきれない面が出てきていることなどだ。

 それでも中国移動では、早速中国電信や中国網通との移動体通信業務における提携構想を発表、中国聯通ではマイクロソフト(中国)と提携、CDMA 1Xの中国における普及で協力していく。小霊通が中国の通信業界の勢力図を塗り替える日も近い。(サーチナ・有田直矢)
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