過去にない「新現象」出現

 CNNの映像が世界に衝撃をもたらした湾岸戦争から12年。インターネットが世界的に整備されたなかで、初の大規模な戦争となった今回のイラク攻撃では、ニュースサイトへのアクセス数の急増、ウェブハッキングの応酬、反戦ウイルスの発生など、これまでは見られなかった“新現象”が目についた。

 「本日の検索タームは『戦争』がトップ。永年の人気用語『セックス』、『ブリトニー』、『旅行』を凌ぐ」――。英国最大のISP(インターネット接続業者)「Freeserve(フリーサーブ)」は開戦後、こんな発表をした。米国ではヤフーインデックス最上位に「イラク」が浮上。ブッシュ大統領を批判した曲の放送拒否が相次いだカントリー・グループは3位に転落した。

 ウェブ主要国の米と中国では、ニュースサイトへのアクセス数が普段の3倍を記録。中国のSofu.comでは、携帯電話に緊急ニュースを有料で配信するサービス(月額3ドル)への新規加入数が、開戦後わずか数時間で2万人の大台に達した。CNNのようなニュース専門ケーブルがない中国では、有事の際、頼りになるのはテレビよりむしろショートメッセージというわけだ。

 ハッカー界では、サイトのトップ画面を自前の反戦メッセージに置き換えるウェブ・ハッキングが横行。米セキュリティ会社「F-Secure」の推定によれば、ハッキング数は開戦直後で1000件を超え、被害は米海軍公式サイトにも及んだ。イスラム支持派のハッカー集団「Unix Security Guard」に至っては3月19日夜だけで400件のハッキングに成功した(ワシントンポスト紙)という。

 一方、中東、欧米地域のウイルス・ライターたちは、ここぞとばかりにウイルスを乱発した。Ganda、Lioten(別名Iraq_Oil)、Prune、Wanorなどがそれだ。いずれも戦争絡みのメッセージに付随して広まるのが特徴で、1か月前から蔓延しているLisaもこの手合い。ただ、反戦メールを装ってはいても、その実、単なる“愉快犯”である可能性もあり、「反戦メッセージの多くは偽装」と疑う専門家も多い。

 米サンフランシスコでは連日連夜の反戦デモで、市街の中心部に一歩も踏み込めない日が続いた。このデモ隊の指揮系統は、昨今はやりのワイヤレス技術がサポート。「集合場所はA」、「○時にB通りを下れ」、あるいは「交差点Cは封鎖。交差点Dに向かえ」――など、貴重な情報をハンドヘルドや携帯電話で交信し合って足並みを揃えたらしい。さらに、デモの映像は反戦派が急きょ立ち上げたインターネット・ラジオ局から繰り返し配信した。

 こうしたインディーズ系の報道サイトは英語で「インディペンデント・メディア・センター」と呼ばれている。

 今回の戦争では、米国で受ける生映像はその大半をアラブ系テレビ局からの提供に頼っている。インディーズ系が元気な分、星条旗の勢いが失わせたように思う。(市村佐登美)