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ハッカー急増も米政府サイトは万全 ウイルス「ガンダ」の被害拡大

2003/04/07 19:17

週刊BCN 2003年04月07日vol.985掲載

 米英軍のイラク攻撃開始を受け、インターネット上でのハッカー行為が急増している。政治的な意図をもつとみられるウイルスも発見されている。ただ、攻撃目標になりやすい政府や軍関連のウェブサイトは万全のセキュリティ体制を組んでいるもようで、今のところサイバーテロと呼べるような大きな被害は出ていないようだ。

 ウイルス対策会社などによると、イラク戦争に関する情報やファイルを添付したワーム型ウイルス「ガンダ」の被害が広がっているという。

 フィンランドのインターネットセキュリティ対策会社Fセキュア社によると、ガンダに添付されたメッセージにはイラク戦争に関するものもあるが、スウェーデンの教育制度批判がもともとのメッセージのようだ。

 米有力コンピュータ雑誌の「コンピューターワールド」は、過去に猛威を振るった数個のウイルスの開発者として知られる「メルハッカー」と名乗るマレーシアのハッカーとの接触に成功したという。さらに、メルハッカーがイラク開戦に合せて新種のウイルス「セズダ」をネット上に解き放つ準備があると警告した、と報じたことがある。だが、今のところ大きな被害報告はない。

 一方、緊張が高まったイラク戦争の開戦48時間前ぐらいから、ウェブサイトが改ざんされるケースが急増。戦争に関するメッセージを掲示するケースが数百件に上った。開戦後は改ざんケースの急増により、改ざんされたウェブサイトを実際に確認することが不可能になったが、少なくとも1日1000件は発生しているもようだという。

 Fセキュア社は、攻撃の対象となりやすいサイトは開戦前から万全のセキュリティ体制を整え、ハッカーグループのものとみられるコンピューターからのアクセスを受け付けないようにしているか、あるいはトップページを常に監視し改ざんされればすぐに元に戻すようにしていると分析している。

 事実、米軍は早くからサイバーテロ対策に力を入れており、米海軍大学院は昨年7月に電話会社や電力会社など、社会の基幹インフラを担う企業の技術担当者を招き、想定可能なサイバーテロのシナリオを徹底検証している。

 その詳細は明らかにされていないが、電話・通信網をまひさせるには、電気工学で博士号を取得できるほどの技術力をもつ数人の首謀者と巨額の資金、100人以上の協力者が必要という結論に達している。

 また全米で停電を引き起こすには、電力送電網の基幹部分を爆弾で破壊し、一部地域を停電したあとで電力網のコンピュータに侵入、是正手順を逆手に取りさらに多くの地域で停電の連鎖反応を引き起こすという段取りを踏まなければならない。

 こうしたシナリオは不可能ではないものの、テロリストにとってはハイジャックなどの通常のテロ行為の方がずっと簡単で効果的。米国社会をまひさせるようなサイバーテロの可能性は低いようだ。(湯川鶴章)
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