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米で盛り上がるオンデマンド・プリンタ 日本メーカー、相次いで製品投入

2003/05/12 19:20

週刊BCN 2003年05月12日vol.989掲載

 オンデマンド・プリント2003が4月7日から9日までニューヨークのジャビッツセンターで開催された。今年は今までと違い、ドキュメントマネジメントのトレードショーであるAIIM(アメリカ情報・画像処理協会)と共同での開催となった。今年は双方のショーで約350社が参加し、訪れた人は4日間で約2万7000人であった。オンデマンド・プリンタは高速で、従来のオフセット印刷に変わるものとして商品化され価格も20-50万ドルと高いものが多いが、最近は日本メーカーが、比較的低価格の製品で参入してきている。

■低価格製品、続々登場

 これまで、オンデマンド・プリンタの内容があいまいで、はっきりしない点があったが、最近の業界の認識としては、①電子写真技術、またはインクジェットプリンタ技術を用いたもので、モノクロまたはフルカラー印刷ができる、②内容において各ページ毎に違ったデータが印刷できる、③プリントスピードはフルカラーで毎分30-40枚以上、ペーパーハンドリングが充実し、フィニッシャーなどの後処理がシステムとして構築されているもの――となっている。

 これらのプリンタは、従来HP-インディゴ、ゼイコン、サイテック、ゼロックス、ネクスプレスなどの欧米企業の製品が中心だ。これらの製品のプリントスピードは、フルカラーで毎分30枚(8.5×11インチ)以上になっている。プリンタ本体の価格は25万ドルから50万ドルと高価のものが多い。またこれらのプリントコストを見ると、オフセット印刷と比較して3000枚以下では安いとされている。

 このような中、キヤノンを始めとした日本の複写機メーカーが、低価格の製品でこの市場に参入してきている。

 キヤノンはカラー複写機をベースとした「CLC 5000」(毎分50枚、8万9500ドル)を発表してから本格的な取り組みを行なってきている。

 今回同社は「イメージランナーC3200」(1万1940ドル)を発表した。

 タンデムエンジンを採用し、解像力は最大2400×600dpi、プリントスピードはカラーモノクロとも毎分32枚になっている。価格も従来と比べ非常に低価格に設定している。機能としてはプリンタ、コピー、スキャナの3機能をもつことができる。ペーパーハンドリングは、最大12×18インチのサイズまで使用でき、また積載量はオプションのペーパーデッキを含めると5000枚までできる。

 旧インディゴ社は、一昨年9月にHPに買収され、HP-インディゴに変わった。旧インディゴ社は、この市場においては古くから参入し、市場開拓に力を注いできた。

 同社の最新のプリントシステム(約20万ドルから)は7色の液体インクを用いたものだが、解像力は812×812dpiで、画質はよりオフセット印刷に近づいてきている。

 プリントスピードはレターサイズに換算して毎時4000-8000枚と高速で、商業用プリンタとして対応が取れてきている。

 今回は新製品の発表はなかったが、会場では色々なプリントサンプルを実際にプリントするデモを行なっていた。

■印刷スピードと高画質を両立

 コニカは今回新製品として、「カラーフォース8050」(3万5000ドル)を発表した。

 これは、解像力600×1800dpi、プリントスピードはフルカラー、モノクロとも毎分50枚。プリント最大サイズは13×19インチ。ペーパーハンドリングは標準で1750枚、オプションのペーパーデッキを使用すると最大4250枚まで積載できる。

 使用しているトナーは新開発の重合トナーで、5%カバレージで、フルカラーで5セント、B/Wで2セントになっている。これは通常のカラー複写機/プリンタと比較して約30-40%安くなっている。

 ネクスプレスはコダック並びにハイデルベルグによる合弁会社として1999年に設立された。コダックの電子写真技術とハイデルベルグのもつ印刷処理技術を用いて開発が行われ、一昨年9月に「ネクスプレス 2100」(約35万ドル)を発表した。イメージプロセスとしては感光体に形成したイメージを現像後ブランケットに転写して更に紙に転写する方式を採用し、このユニットを各色(YMCK)セットしてタンデムエンジン方式になっている。中間体の転写方式を採用することによって用紙の選択並びに画像の安定性が優れている。解像力は600×600dpi、プリントスピードは毎分70枚になっている。

 使用できる用紙は、現在オフセット印刷で使用されているものはほとんど使用できるようになっている。現在市場では、最も画像品質が良いとの評価が出ている。

 ゼロックスは、富士ゼロックスと共同で「ドキュカラー2060」(60ppm、1万2200ドル)「同2045」(45ppm、9万1000ドル)を開発し市場に投入してきており、この分野ではシェアを伸ばしてきている。そして一昨年9月にはこのシリーズの上位機種としてフルカラーで毎分100枚の「iGen3」(約30万ドル)の開発を発表し、昨年暮れより発売を開始している。今回それを中心に展示を行なっていた。

 この「iGen3」はゼロックスが独自に開発を進めてきたもので、中間体を用いずに直接感光体に形成されたイメージを紙に転写するもので、現像方式は乾式トナーを用いたタンデムエンジン方式を採用している。

 サイテックは1995年より、インクジェットプリンタ技術を用いた高速プリンタの商品化を手がけてきている。プリント技術はコンティニュアス方式を採用している。その後開発を進め2000年には「バーサマーク」(約50万ドル)を発表している。

 コンティニュアス方式のため、プリントスピードは8.5×11インチの用紙に換算すると毎分708枚のプリントが可能になっている。最大20インチ幅の用紙までセットできる。

 また、解像力は最大300×600dpiになっている。この解像力により、同社はビジネスカラープリンタとしての製品位置づけを行なっている。そのため主なユーザーは、公共料金(電気、ガス、水道、電話など)の請求書用の印刷、大学などのテキスト印刷などに使用されている。(辻田純一)
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