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松下電器産業 世界同時発売へ「IT革新」急ピッチ

2003/06/23 19:23

週刊BCN 2003年06月23日vol.995掲載

 松下電器産業(中村邦夫社長)は、2001年度(02年3月期)から進めている再生プラン「創生21」の最終段階として、主力製品のAV(音響・映像)機器を中心とした「世界同時発売・垂直立ち上げ」戦略の拡大を急いでいる。これまで地域別に発売時期をずらすことで生じていた販売機会の損失などを解消し、収益力を高めるのが狙い。SCM(サプライチェーンマネジメント)や生産方式の見直しなどにより、同時展開をAV機器全般に拡大させる。今年度(04年3月期)中には全体的な改革が完了する見通しだ。

「創生21」が最終段階へ

 世界同時発売・垂直立ち上げの第一弾としては、今年2月、普及タイプのDVDビデオレコーダー「DIGA(ディーガ)E50」で初めて実施。今後はAV機器を中心に順次展開する。

 従来は国内の直販店約1万9000店や量販店に商品を卸したあと、時期を遅らせて北米、欧州、アジアなどで発売していた。しかし、「タイムラグが大きいほど販売機会を失い、その間に競合製品の参入も許し、値崩れが生じ収益を下げる結果を招いた」(戸田一雄・専務取締役)という。

 そこで、世界同時発売を幅広い商品に適用。ブランド戦略や商品力強化、グローバルなSCMの推進、セル生産方式(1人生産方式)への移行など、「IT革新」を本格化させた。

 ブランド戦略では、日本以外の海外ブランドを「Panasonic(パナソニック)」に一本化し、広告宣伝費など投資やリソースを集中。7月には、「ブランドマネジメント室」というブランド強化の特別担当部署を新設する。強い商品力の構築では、「ブラックボックス技術」による「V商品」の強化で、特許や材料、生産方式など他社が追随できない技術とノウハウで商品の囲い込み策を推進してきた。

 02年度(03年3月期)は、この「V商品」の効果で、前年度の5000億円の連結赤字から一転、「V字回復軌道に乗った」(戸田専務)。今年度は新たに「V-II商品」(90件)を投入する。これにより、ユビキタスネットワーク化の加速や省エネなど地球環境対応の促進、デザインアイデンティティの確立を目指す。

 世界同時発売では、部品の調達や生産の同時並行化などが必要になるため、今年中にグローバルなSCMを確立する。また、商品サイクルの短期化に対応し生産性を高めるため、国内とアジアにある同社工場の大半を「セル生産方式」に切り替える。すでにDVDビデオレコーダーの組立工程は01年8月に同方式へ移行している。

 「従来は国内外のマーケティング担当部署が、発売当初に生産ラインへ見込みで発注していたが、モデルごとに売れ行きのバラつきは避けられず、在庫を抱えることも多かった。セル生産方式なら売れた状況に合わせ短いサイクルで商品を卸すことが可能になる」(江川哲雄・広報グループコーポレート広報チーム主事)としている。

 同社では、01年度から3年間の再生プラン「創生21」を推進中だが、最終年度となる今年度はSCM改革を軸に大詰めの作業を急ピッチで進める。
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