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ウェブサービスを支える新技術、ESB

2003/06/23 19:23

週刊BCN 2003年06月23日vol.995掲載

メーカー各社の思惑が錯綜

 ウェブサービスが市場に紹介された当初は、これを採用するシステムの運用実績結果を見る前にその技術仕様が広くメディアに取り上げられたことで、関心のみが先行する結果を生んでいた。SI(システムインテグレータ)業者にとって今やなくてはならない存在となっているウェブサービスの最近の動きを紹介する。

 米国防省は、ながらく運用してきた戦略的情報システムをウェブサービスによる新しいシステムへ切り替える決断をした。

 この新システムを支えるESB(Enterprise Service Bus)が、これからのウェブサービスを牽引していく重要な技術として注目を集めている。

 J2EE(Jave 2 Enterprise Edition)の拡張技術であるJMS(Java Messaging Service)のもつメッセージング技術を駆使して構築されたESBは、ウェブサービスが目指す機能性や柔軟性を実装するための環境として市場に提案されているものだ。

 ソニック・ソフトウェアが開発したESBシステムの導入を進める米国防省は、ESBに切り替えることでシステムの開発維持管理費用をこれまでの10分の1以下にまで圧縮することが可能になったと語っている。

 ソフトウェア単体を部品と捉え、それぞれの部品がお互いに連絡を取りながら全体の機能を構成するという考え方は、ソフトウェアの世界では古くから存在していた。しかしメーカーの思惑、ハード/ソフト技術の未熟性、更にはインターネットを環境整備の遅れなどが、この考え方の実現を阻止してきたという経緯がある。

 ハードウェア、OS、プロトコル、言語などの壁を全て取り払った本当の意味での透過性をソフトウェア技術の上に確立したことが、ウェブサービスがここまでの支持を勝ち得た最大の原因であることはよく指摘される。

 しかしこのウェブサービスを最初に声高に叫び始めたのが、Javaの脅威を撃退するために.NET技術の開発を進めていたマイクロソフトであったことは興味深い。

 マイクロソフトとIBMという有力ソフトウェアメーカーが中心となり、呉越同舟ながらウェブサービスを推し進めてゆく中、サンを中心とするJava陣営はこのウェブサービスの急激な発展にやや出遅れた感があった。

 しかしその時点で既に市場を確立していたJavaは、その後もJ2EE、XML、JMSなどの投入により、設計仕様の拡張を積極的に進めていた。完全透過的なウェブサービスの仕様がいよいよ固まった時点で、JMSを基盤とするESB陣営が、ウェブサービス実装企業として大きく市場での注目をあつめるという、マイクロソフトにとっては皮肉な結果が今市場で展開されている。

 IBMは元来J2EEを推進する主要企業のひとつであり、市場の注目がウェブサービスからESBへ切り替わったとたんにIBMがマイクロソフトに対する最大のライバルになるという。(寺原 孝)
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