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オラクル対ピープルソフト 買収合戦の行く末は

2003/07/07 19:28

週刊BCN 2003年07月07日vol.997掲載

 エンタープライズソフトウェア業界の大手ピープルソフトが中堅企業J.D.エドワーズとの間で17億ドル相当の買収計画を進めていることを明らかにした数日後、競合オラクルはピープルソフトに51億ドルの敵対的な買収計画を提案、大きな衝撃を与えた。巨象と弟子、最後に笑うのは誰か。

宙に浮くJ.D.エドワーズ

 「極悪非道な行為」――。ピープルソフトのクレイグ・コンウェイCEOはオラクルから6月9日に突然届いた書簡による株式公開買付け(TOB)提案を12日の記者会見で、言下に退けた。

 「これはJ.D.エドワーズ買収計画をぶち壊しにする明らかな妨害行為」とそのやり口を舌鋒鋭く批判するコンウェイCEOは、オラクルでラリー・エリソン会長の指揮下、長年幹部職を務めた後に独立した通称“リトル・ラリーズ”の1人。元上司エリソン会長のビジネス手法については熟知している。

 ピープルソフト(従業員8200人)はオラクルとビジネスアプリ市場でシェアを争うライバル企業だ。ピープルソフトがJ.D.エドワーズ買収に成功すればオラクルの劣勢は明らか。そこで、今回の敵対的買収に及んだという。

 大型合併発表の数日後にぶつけるというタイミングもさることながら、当初提示額51億ドルはピープルソフトの時価株価に若干上乗せした程度の過小評価額。しかも買収後は「ピープルソフト製品の販売はすべて中止、オラクル製に移行させる」、「ピープルソフトのエンジニアは全員解雇し、顧客だけもらう」とくれば、すんなり受け入れる方がどうかしている。

 とくに解雇については、ピープルソフトが最大雇用主である地元プレザントン(オラクル本社からは車で30分程度の対岸)の住民から大きな反発を招いた。

 提案公開当初は、「きっとまたエリソン会長が得意の冗談を」と軽く受け止める向きもあった。しかし、買収提示額が1株19.5ドル、総額63億ドルに一気に引き上げられた18日を境に、情況はにわかに真実味を帯びてきた。

 魅力ある提示に株主の気持ちが動かぬよう、ピープルソフトは「オラクルの提案を受け入れれば市場の競争は大きく阻害される」と、“独禁法違反”の論戦展開に血道を挙げている。

 この訴えに応じるかたちで、連邦司法省独占禁止局は30日、オラクルに対し買収提案関連の追加資料の提出を求めた。マイクロソフト反トラスト法裁判の牽引力として知られるコネティカット州のリチャード・ブルメンタール検事総長も18日、合併阻止に向け独禁法訴訟を起こす構えを明らかにした。

 「ピープルソフト製品の販売が中止された場合、同州はシステム移行に1億ドルの出費を強いられる」というのが同総長の主張だ(オラクルは否定)。同様の独禁法裁判はピープルソフト側にもなされている。

 TOB期限は7月7日だが、追加資料要求で延長は必至。市場の成熟を強く印象づけた買収合戦、食うか食われるかの闘いの成り行きに注目したい。(市村佐登美)
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