ニュース

米国の携帯電話事情、混迷の時期は続く 普及し始めたカメラ付き携帯

2003/08/25 19:30

週刊BCN 2003年08月25日vol.1003掲載

 ようやく米国でも普及し始めてきたカメラ付き携帯電話。しかし音声通話以外の活用は相変わらず少なく、高機能化を進める供給側の意気込みは空回りしがちだ。まだしばらくは時間がかかりそうな3G(第3世代)化と、遅々として進まぬ2次用途に、キャリア各社の意向と一般的ユーザーとの意識のズレが見られる。

 全米でサービスを展開しているところだけでも6社を数える程に、競争の激しい米国での携帯電話市場。ようやく3G化を始め、高付加価値機能付きの端末が出回っており、各キャリアとも新製品の宣伝と加入者の確保に必死だ。

 各社ともカメラや大きな液晶を持つ新製品をラインアップし、消費者の購買意欲を刺激している。欧州や日本に比べ遅れ気味の米国携帯電話事情も、ようやく世界の水準に追いつく兆しを見せ始めている。

 世界的に拡大傾向の続く携帯電話市場だが、米国でもその状況は同じ。最大手のベライゾン・ワイヤレスも売り上げは好調で、低迷の続く一般回線部門の穴埋めをしてあまりある収益を上げ、会社全体では3億ドル以上の利益を上げることに成功している。

 そのベライゾンはCDMA形式を採用している。米国ではCDMA方式とGSM方式が混在しているが、同社に出資している英国のボーダフォンは、CDMA方式からGSM形式への変更を迫っているとも言われ、欧州同様にGSM方式を採用している独系のT-モバイルや、CDMA方式を採用するスプリントなどの米国系企業との競争も一層熾烈になっている。

 しかし、米国では携帯電話を利用する1億4000万人のうち、音声通話以外の用途に利用しているユーザーはわずか1000万人以下に過ぎないとされている。また、通話エリアの狭さや地下で利用できないなど欧州諸国や日本に比べ、そのサービス水準の低さは否めない。

 一方その端末も、例えばカメラ付き携帯は既に各社ラインアップを揃えているが、日本に比べその機能は玩具以下だ。また高機能化にともない複雑になる一方の操作方法や、小型化による操作ボタンの押しにくさなどが、一般的なユーザーから敬遠される一因となっている。さらに各社ともパームなどのPDAメーカーと協力し、更に多機能な通信端末も販売中だが、依然として魅力ある市場にはなっていない。

 メールや各種データのやりとりが可能になったことで、ようやく欧州や日本の水準に追いついた米国の携帯電話。これまでは高価だった高機能端末の価格も、徐々にではあるが下がってきている。

 今後は更に各種の機能が積極的に利用されることが期待されており、ZD NET社では、今後4年を待たずに、携帯電話ユーザーの15%はこういった付加機能を利用すると予想している。しかし、欧州や日本とは異なる路線を進むアメリカの携帯電話は、今後も混迷の時期が長く続きそうだ。(田中秀憲)
  • 1