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米国ITベンチャー、日本市場開拓を加速 ターゲットは付帯サービス

2003/10/20 19:35

週刊BCN 2003年10月20日vol.1011掲載

 世界的に見ても安価なブロードバンドサービスが普及した日本。アジアきっての先進国として市場は大きく、ようやく不況からも抜け出せそうだ。その日本は、海外のITベンチャーにとって非常に有望な市場と映っている。米国の新進ベンチャーの視点から、次のターゲットである魅力ある日本市場を分析する。

 ここ1年ばかり、「日本への進出を計画している」という声をよく聞く。特に新進のベンチャー企業からそのような声が多い。しかも、これまでのように、メディア向けのリップサービスや、ただの売り込みではなく、具体的な戦略と市場調査の上で日本進出を真剣に検討している企業が多いのが特徴だ。

 その多くはソフトウェアの開発や各種の付帯サービスの提供を行っている企業で、ハードウェアの製造/販売は少数派だ。

 「日本ではブロードバンドの普及率が高く、価格も非常に安い。教育水準は高く、しかも西側諸国の商慣習に馴染んでいる。日本の企業は古い体質から脱却し、社会構造も新しい基盤を築きつつある。同じくブロードバンドが普及している韓国は市場としては小さいし、他のアジア諸国は、言語や商慣習の違い、通貨や政情の安定度などからリスクが大きい。中国を除けば、日本以外のアジアへの進出は、ベンチャーにとっては魅力がない。当社も中国と日本以外のアジア諸国への進出は全く検討していない」と語るのは、e-ラーニングの新進企業、VIDYAH.COMのビル・マンデルCEOである。

 日本では、多くのユーザーが携帯電話を電子メールなどのデータ通信にも利用している。個人、企業を問わず購買力は高く、パソコンも含めた最新のIT機器が飛ぶように売れている。付帯サービス市場が大きいと考えるのは当然だ。

 更に日本は、アジアの中で西側諸国のルールがそのまま通用する数少ない市場でもある。これまで最大の懸念事項だった価格競争の問題も、長引く日本の不景気がかなり低減してくれたため、新進のITベンチャーでも具体的な戦略を練りやすい。

 米国でも日本のメーカーの製品は珍しくもないが、一方日本発のソフトウェアや付帯サービスは皆無に近い。このような現状を目にした新進ベンチャー達は、自社の技術とアイディアをもってすれば、日本市場を開拓できると考えるのだろう。

 各種のリスクが低くなっていることも、初期投資が大きい製造業ではなく、ソフトウェア開発や付帯サービス業が中心となっているこの動きを加速していると言える。

 海外からは非常に有望に映る日本の付帯サービス市場。パソコンのOSや、各業界のデフェクト・スタンダードソフト群同様に、この分野も海外の企業に席巻されてしまうのだろうか。(田中秀憲)
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