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音楽配信サービス、大手企業参入で新展開 ナップスターが復活

2003/11/17 19:37

週刊BCN 2003年11月17日vol.1015掲載

 およそ2年ぶりに業務を再開したナップスター。ウィンドウズユーザーにまで手を出したアップルコンピュータを始め、新規参入も盛んだ。音楽ファイルのインターネットサービスは徐々にその姿を変えつつあるが、しかし、かつての好感度の高いイメージだけは変えたくないようだ。新しい時代に突入した音楽配信サイトの思惑を探る。

 ナップスターが復活した。かつてのナップスターは、音楽ファイルの交換サービスを提供しており、無償という点が人気の要因だった。しかし新生ナップスターは、音楽ファイルの「交換」ではなく「販売」のサイトだ。その業務内容は正反対で、かつての姿を知る者から見ると違和感がある。

 一方、カザーを始めとするファイル交換サービスは依然人気が高く、音楽CDの売り上げはこれらのサービスが普及する以前に比べ、約3分の1にまで激減している。当然業界各社はこれらのサイトを敵視し、圧力をかけ続ける。もっとも、その一方で、ネット配信を新たな収益源とするための模索も続けていた。

 そんな中、有償の音楽配信サービスが利益を生むと見たのはナップスターを始めとする音楽業界だけではない。ウィンドウズ用アプリケーションをリリースしたアップルコンピュータや、デル、ヒューレット・パッカード(HP)といったメーカーはもちろん、ウォルマートやAOLといった異業種からの参入組も目立つ。ところが、かつてはこういう機会を逃すことのなかった新規のベンチャーはほとんど目にしない。

 音楽のデータ配信は、競合する各社間で品質の差が生じにくい。従って市場争いの勝敗を決定づける要因は、マーケティング力とブランド力だ。今回の新規参入組は、まさにここに勝機を見い出している。

 いずれも自らが持つブランド力と既存の顧客を武器に、将来有望なこの市場に参入してきており、無謀なギャンブルをする気など全くないかに見える。もちろんナップスターも、現在の米国経済の状況では、たとえ業務内容が正反対であっても、かつての知名度と好印象を再利用したいと考えたのだろう。

 ナップスター裁判で勝利したにもかかわらず、悪役となってしまった音楽業界。今後はなんとかそのイメージを払拭し、かつ着実に収益を上げていきたいと考え、ナップスターの知名度やイメージを利用しようとしている。

 音楽業界全体でもかつての人気グループの復活やヒット曲のリメイクなど、消極的な手法も流行しており、知名度のあるブランドの再利用は、これら業界特有の傾向にも影響されていることは否めない。

 新時代を迎えるオンライン音楽配信サイトのシェア争い。今度はベンチャーによるゲリラ戦ではなく、実績と経験を兼ね備えた、したたかな大手同士のがっぷり4つに組んだ戦いである。(田中秀憲)
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