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マック誕生20年神話が伝えるもの コンピュータの歴史を変えたマシン

2004/01/26 20:19

週刊BCN 2004年01月26日vol.1024掲載

 マッキントッシュ(マック)が今月生誕20周年を迎える。シリコンバレーの20代を中心にエンジニアとアーティスト総勢100余名がアップルコンピュータ本社最寄りの別棟で週90時間という超人的労働の果てに完成させたこの製品は、大企業・官公庁から一般の家庭へとコンピュータの主役を塗り変えた。語り継がれるマック神話、その意義とは。

 アップルのシェアは現在1ケタ台前半である。数だけ見ればマックの20年は興隆と凋落の歴史と言えよう。だが、シリコンバレーではイノベーションこそが至上の価値を帯びる。その意味で、マックはまさに衝撃的だった。

 アップル製パソコン「マッキントッシュ」が本社近くの大学講堂で正式に公開されたのは1984年1月24日。ゼロックスのパロアルト研究所が開発したグラフィカル・ユーザー・インターフェイス(GUI)とマウスなど最先端のユーザーフレンドリーな機能をモニタ一体型のボディに搭載。製品の到来を告げるスーパーボウル中継谷間のCMは、今も広告史上最も有名なテレビコマーシャルに数えられている。

 同機はしかし、史上初のパソコンというわけではない。パソコンの登場は、1976年のエイプリルフールにアップルを創業したスティーブ・ジョブズ(当時21歳)とスティーブ・ウォズニアック(同25歳)の2人がガレージで組み立てた「アップルⅡ」(666.66ドル)にさかのぼる。このシリーズはマニアに絶大な人気を得て同社は急進。これに対抗すべく81年には巨人IBMも初のウィンテル型パソコンを発表し、早くもアップルの将来に不吉な影を投げかけている。

 ただ、「コンピュータの歴史を永久に変えた」機種は何かと問われれば、答えは「マック」が圧倒的だ。理由はいくつかある。一番の根拠はあのマウス。あれをくっつけたことで面倒なコマンド入力は不要となり、誰でもコンピュータをいじれるようになった。また、マックはそれまでの電算処理やプログラミングという用途の殻を破り、右脳型人間も自由に絵を描いたり文章を書くことを可能にした最初のツールである。要は「普通の人が難しいコマンド入力を習得することなく普通に使えるマシン」ということで、今日のパソコン全ての雛型とされる。

 メンタルな部分に与えた影響も大きかった。マックは反体制、革新、開拓、万人の技術、模倣でない独自性、価値創造など、ヒッピーの本拠地らしい斬新なテーゼを具現化してみせた。その全てがその後のパソコンの進むべき方向性を決定づけたといっても過言でない。20周年を機に地元ではパソコンの歴史と意義を振り返る企画が盛り沢山だが、そんななか、アップルは14日、この4年間で最高の四半期売り上げを計上し、長らくなかった2ケタ台の成長軌道に戻した。アップルがどんな未来を見せてくれるのか。先が楽しみな存在である。(市村佐登美)
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