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日本デジタル研究所 「出納帳」を無料配布

2004/04/05 20:44

週刊BCN 2004年04月05日vol.1034掲載

 会計専用機大手の日本デジタル研究所(JDL、前澤和夫社長)は4月1日、パソコン量販店で市販されている同社の経理ソフトウェア「JDLIBX出納帳3」の機能限定版を無料ソフトとして配布開始した。4月1日施行の改正消費税法で課税対象となる中小企業や個人事業者などに対し、経理ソフトへの注目度を高め、業務ソフト市場の裾野を広げるのが狙い。短期的には「(JDLの)売り上げに影響する」ものの、「JDLのブランドイメージが高まり、経理ソフト市場全体のパイも拡大できる」とみている。将来的にはJDL製品のユーザー拡大につなげたい考え。JDLの無料ソフト戦略は業界の新たな“台風の目”となりそうだ。

業務ソフト各社への影響必至か

 「すべての中小企業や個人事業者の経理業務をIT化するための第1ステップに過ぎない」──。同社でパソコン量販店向け経理ソフト「JDLIBEX出納帳」などの販売を陣頭指揮する森崎利直・取締役マーケティング本部長兼広報担当部長は、無料ソフト配布の理由をこう語る。

 4月1日から施行された改正消費税法への対応として、「業務量の増大と煩雑化が予測される経理業務の効率化を支援することが目的。同時に業務改善を求める人たちを中心に経理ソフト全体の注目度を高めたい」(森崎取締役)と、潜在顧客の顕在化が狙いという。

 JDLが無料ソフトのユーザーとして想定しているのは、改正消費税法で初めて経理ソフトを導入する事業者。今後1年間に約30万件の申し込みを見込む。無料配布するソフトは、パソコン量販店で市販されている経理ソフト「JDLIBEX出納帳3」とほぼ同等の入力機能をもち出力帳票を帳簿に限定した「JDLIBEX出納帳3カジュアル」。

 市販の「出納帳3」と比べ、お金の出し入れは管理できるものの、印刷機能が帳簿作成に絞り込まれている点が大きな違い。元帳や部門別の集計データなどを印刷することはできない。これらのデータを税務署などに提出するには、最終的に顧問先の会計事務所で処理する必要がある。

 すでに何らかの経理ソフトを活用している企業や事業者は、「帳簿だけでなく月次損益計算書など財務資料を作成、印刷できる市販の経理ソフトを必要としているはず」(森崎取締役)とみる。経理処理の中級者を対象にした市販ソフトと、初心者向けの無料ソフトとでは、利用用途が異なり顧客層が違うとの判断だ。

 そのため、「短期的に(JDLの)市販ソフトの売り上げに影響を及ぼすかもしれないが、それは一時的なもの。市販の『出納張3』や他の経理ソフトとは競合しない。むしろ、ソフトに慣れ、経理処理のコンピュータ化が進むことで、経理ソフト市場の裾野が拡大する」(森崎取締役)と、説明する。

 配布は、JDLのウェブサイトからのダウンロードと、はがきによる申し込みでCD-ROMを送付する。経理業務の改善に取り組む中小企業や個人事業者であれば、特別な条件はない。無料ソフトには、異なるアプリケーション間のデータ交換に使う「CSV変換ツール」が組み込まれており、JDL製品に限らずデータ交換ができる。このため、「当社が単に自社だけの目先の販促策として考えてないことが分かるはず」(森崎取締役)という。

 JDLでは、無料配布後のサポート用ウェブサイトも開設。ソフトの概要を説明した「トータルガイド」や音声・動画で分かりやすく解説する「ウェブセミナー」のほか、詳細な操作方法を示した「PDF版操作説明書」をソフトに添付する。eメールや電話を除けば、ほぼ通常のソフトサポートを実施していく。

 政府税制調査会によると、4月1日に施行された改正消費税法により、新たに申告と納付が必要になる事業者は136万、簡易課税から本則課税に移行する事業者は57万に上ると推定されている。業務ソフト各社は、これら事業者の大半は手作業による経理作業をしてきたが、今後は業務が煩雑になり、事務処理の負担を軽減するために経理ソフトが必要になるとみている。

 会計専用機最大手のJDLは2002年6月、財務・会計・給与など業務ソフトの店頭販売市場に参入。BCNランキングによると、販売本数シェアトップの弥生に次ぐ位置に付けている。森崎取締役は、「今回の無料配布でブランドイメージが浸透し、『会計システムはJDL』との認識が消費者に伝わることを期待する」と、市販ソフトだけでなく、会計システム全体でのトップ評価獲得に意欲を燃やしている。
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