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昨日の敵は今日の友?MSとサン、歴史的な和解 10年間の技術協力で合意

2004/04/19 20:44

週刊BCN 2004年04月19日vol.1036掲載

 宿敵ゲイツをダースベーダー(スタートレックの悪役)と呼び、マイクロソフトを悪の帝国と斬り捨てたシリコンバレーの反逆児、サン・マイクロシステムズのスコット・マクネリー会長が今月2日、両社間で今後10年間の技術協力を行うことで合意に達したと発表した。冷戦終結を現地ではどう受け止めているのだろうか。

 マイクロソフトのスティーブ・バルマー社長と同郷のホッケーチームのシャツにサインを入れて交換し、“壁崩壊”のアピールに余念のないマクネリー会長。この“壁”がいかに分厚いものだったかは、過去のマクネリー語録に当たるのが一番手っ取り早い。

「スティーブ・バルマーに狂人呼ばわりされると誉め言葉に聞こえる」、「悔い改めない独占者」、「ビジネスを学んだ本人が製品を無料で配ってビジネスを台無しにする。こんな芸当ができるのは独占企業だけだ」。どれも毒気たっぷりだ。

 発表は地元シリコンバレーでもシュワルツェネッガー知事誕生以来の驚きをもって迎えられた。昨夏、サン本社内のトイレでゲイツらしき人物が目撃された折には誰もが他人の空似と信じて疑わなかった──そんな後日談まで出回るなか、この朝は誰もがしばらくはニュース画面に釘付けとなったようだ。

 シリコンバレーのエンジニアや企業幹部の間ではマイクロソフト・アレルギーがいまだに根強く、バレーが生む最高のアイデアにタダ乗りする“真似っ子”、“寄生虫”と信じられている。

 これを裏付けるかのように、先月24日にはミネソタ州で独禁法関連集団訴訟の証言台にハンドヘルド分野の草分け企業GOの元CEOが立ち、ゲイツ氏が同社への投資を中止するようインテルのアンディ・グローブCEOに圧力をかけた影響で、インテルからの投資が当初予定の半額以下の極秘扱いとなり、GOが失脚に追い込まれた事情が明らかとなった。GO消滅はマイクロソフトが握り潰した被害規模において過去最大のケース。似た事例はアップルコンピュータ、ネットスケープなど枚挙にいとまがなく、両者の恩讐の歴史は30年近く前に1人のハッカーがBASIC初期バージョンを複製した時点にまで遡る。

「マイクロソフトのしたことは過ちか?もちろんだ。しかし法制度による問題解決のスピードが技術分野では追いつかないのだ」。地元の未来研究所所長はサンが法廷闘争を志半ばにおりた背景をこう分析する。また、あるベンチャーキャピタリストは「ショックと同時に恐れ入ったのも事実。賠償金19億ドルと言っても結局、銀行に600億ドル以上もある企業にとってはバケツの中の1滴なんだよね」と語る。著名投資家レジス・マッケンナー氏は両社の協調新路線を「ハリネズミ2匹の結婚」にたとえ、「かなり慎重に取り組む必要があるだろう」と警告した。

「OS標準争いはもはや意味をなさない、と言い切る人たちは、無駄な争いは止めてLinux対策に本腰を据えたいだけ」と受け止めた。思惑通りに協調していけるだろうか?(市村佐登美)
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