市町村合併が大詰めを迎えるなかで、情報システム統合商談に大手ベンダーが激しい競争を繰り広げている。3月末までの段階で、住民記録などの基幹システムについては富士通が「参加した約250団体の合併商談のうち、130団体を獲得した」(荒安明・富士通経営執行役公共営業本部長)とし、NECは「約90団体」(鹿島康平・NEC公共ソリューション事業部事業推進部長)、日立製作所は「本体で約10団体、日立情報システムズなどグループ関連会社を含めて約50団体を受注している」(最上義彦・日立製作所公共システム事業部事業部長)。大手3社で、すでに250団体以上の市町村合併にともなうIT統合案件を受注、あるいは内定を取り付けたことになる。

大手3社では250団体以上

 富士通、NEC、日立製作所の受注および内定の獲得数は、本社以外にも子会社や地域のパートナーなどが受注した団体数も含まれる。地元ディーラーなどをバックアップすることで、受注を有利にしたケースもある。

 総務省によれば3月11日の段階で、東京都以外の46道府県の1897市町村が参加し、513の合併協議会が設置されている。1999年7月16日に現行の合併特例法が公布、同日施行されてからの市町村合併件数は2001年の新潟県新潟市と黒崎町の合併から、04年4月1日に新市となった阿賀野市(新潟県)、伊豆市(静岡県)など11市を合わせて156団体となっている。さらに、04年度は7月1日の五戸町(青森県)から05年3月3日の佐伯市(大分県)まで、28団体ですでに合併日が決定している。

 現段階では、05年3月31日までに合併した市町村が合併特例法の対象となるが、合併協議が継続していることなどを勘案し、今国会で05年3月31日までに合併調印した市町村まで対象とする法改正がなされる可能性もある。

 しかし、最短で特例法の期限が1年しかない場合を想定して、富士通、NEC、日立製作所の大手3社はいずれも、受注拡大とともに開発期間の短縮を最優先に合併自治体のIT統合を推し進めていく考え。メーカーによっては、「電子自治体パッケージと合わせて提案するのを止め、ともかく情報システムの統合だけに絞って説得している」というところもあるほどだ。

 その一方で、日立の最上公共システム事業部長は、「自治体向けのパッケージ開発で研究所とも協力している」と語り、短期間で導入が可能なパッケージを積極的に活用していく方針だ。もっとも、自治体ユーザーのなかには、税などの業務でカスタマイズされた既存システムの移行を求めるケースが相変わらず多いのも事実。このため、新しいパッケージを売り込むために、「ある程度のカスタマイズにも対応する必要があるだろう」(最上事業部長)と、顧客の要求に応える余地を残している。

 また、合併を機に新しい情報システム運営を模索するところも出てきた。富士通の関連会社の富士通インフォテック(香川県)が受注した、さぬき市の場合は、情報システムを完全に富士通インフォテックにアウトソーシングする形態をとっている。こうした動きは確実に広がりを見せ始めており、「今年秋には明石市(兵庫県)も当社にアウトソーシングすることが決まっている」(荒富士通経営執行役公共営業本部長)という。

 一方、メインフレームやオフコンで構成されたレガシー(旧式)システムを、市町村合併や電子自治体構築でクライアント/サーバー(C/S)システムに移行する自治体もある。NECがすでに受注した長岡市(新潟県)の場合、周辺5町村との合併を予定(期日未定)しているが、まず長岡市が新システムをC/Sシステムで構築し、そこに合併する町村のデータを移すことになる。

 合併商談は当面続くが、時間の制約が厳しくなるだけでなく、自治体の財政難で「中小の案件になると、価格条件が一段と厳しくなる」(鹿島NEC事業推進部長)と、収益を圧迫する要素も出てくる。時間が押せばシステムエンジニア(SE)を多く投入する必要もあり、採算的には厳しいプロジェクトも出てきそうだ。

 これまでも、市の名称が決まらずに合併が破談になった団体もある。期限ぎりぎりの“駆け込み合併”が予想されるなかで、システムベンダーにとってはSEの配置や受注価格の低下など、情報システム統合プロジェクトの受注にもリスクが高まりそうな気配だ。