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パソコン64ビット時代、AMDが主導 Linux拡大の可能性も

2004/06/07 20:49

週刊BCN 2004年06月07日vol.1042掲載

 これまでサーバーやワークステーションなどの高性能コンピュータとパソコンとの違いの定義は、CPUにあった。高性能機が64ビット、パソコンが32ビットだったわけだ。ところが来年末には出荷されるパソコンのほとんどが64ビットになる見通しという。パソコンはどのように変わるのだろうか。

 米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長は5月4日に開催されたハードウェア開発者向け会議「WinHEC」で、64ビットコンピュータ向けのウィンドウズXP「64ビット・エクステンデッド・システムズ」エディションを発表した。

 同会長によると、2005年末までには米半導体メーカーのアドバンスト・マイクロ・デバイシズ(AMD)が出荷するすべてのCPU、同インテルが出荷するほとんどのCPUが64ビットになる。

 これらのCPUは、これまでの32ビットプログラムにも対応するという。OS、ハードともに64ビットになるということは「ワークステーションは64ビット、パソコンは32ビット」という定義が崩壊するわけだ。

 パソコンが64ビットになれば当然処理能力が大幅に向上する。マイクロソフトが行った実験では、高速インターネットを使えば1ギガのデータを1秒間でダウンロードできたという。音楽CD1枚分のデータが1秒で転送できるわけだ。パソコン上のアプリケーションの幅がさらに拡大することが期待される。

 またパソコン64ビット時代になれば、LinuxやUNIXなどのもともと64ビットのOSに注目が集まる可能性がある。特にLinuxは発展途上国を中心にシェアを拡大し続けている。パソコンが64ビットへと移行するなかで、Linuxがウィンドウズからさらにシェアを奪う可能性は否定できないだろう。

 ところで、パソコンの64ビット時代の幕開けの立役者はAMDだ。これまでAMDはどちらかといえば最大手インテルの後追いというイメージが強かった。ところがAMDはインテルに先駆けて03年春に64ビット「オプテロン」を発表。これに対しインテルは、64ビットでは32ビット資産をすべて生かしきれないと判断したのか、すぐには64ビットに対応しようとはしなかった。64ビットに乗り出したと発表したのは04年2月。その際も発表文の中で「64ビットに移行するのは自然な進化である」とし、決してAMDの後追いではないことを強調している。

 しかし、米調査会社In-Stat/MDRのトム・ハーフヒル氏は、「これは両社の関係における大きなターニングポイント。AMDが世界で最も重要なプロセッサのアーキテクチャの方向性を主導したのは初めて」とコメント。AMDが先行したと評価している。またAMDの開発者チームが米EDNマガジンの「イノベーター・オブ・ザ・イヤー」に輝くなど、AMDの評価は急上昇しているようだ。(湯川鶴章)
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