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中国家電ハイアール、パソコン市場へ本格参入 対抗するレノボと激しいバトルへ

2004/06/28 20:49

週刊BCN 2004年06月28日vol.1045掲載

 6月初旬に開催された「コンピュテックス台北2004」において、中国最大手総合家電メーカーである海爾集団(ハイアール)が、大型契約を締結した。契約内容は、ノートパソコン用部材となるメモリチップなどで、同社がノートパソコンを突破口として本格的にIT業界に参入するとして大きな話題を呼んでいる。

 ハイアールは、力晶半導体(PSC)や勤茂科技(TwinMOS)など台湾半導体大手から、メモリチップなどのノートパソコン用部材を調達。契約総額は、同展示会で規模最大となる100億元相当に及んでいる。

 同社は、三洋電機との提携などで白物家電のイメージが定着しているが、香港上場企業である海爾中建(ハイアールCCT)を通じて携帯電話事業を展開。そして、2003年に入り、パソコン部門として台湾の宝成工業傘下である精成電子科技(GBM)と合弁で海成信息科技を設立している。

 しかし、今回のハイアールの動きに対して、業界では厳しい評価が下されている。パソコン販売には、専門の代理店販売ルートの構築が不可欠であることがその1つ。ハイアールが有する強固な家電販売ネットワークをパソコン販売に活用することはできないとみられている。100億元の部材調達額が、同社の経営を圧迫することにもなりかねないとリスクを指摘する声も聞こえる。

 中国パソコン業界の巨頭としてトップの座に君臨し続ける聯想集団(レノボ)は、すでに大規模な事業再編を決行。世界進出への土台作りとみられたが、予想に反して中国市場重視の戦略を打ち出した。その背景には、中国パソコン市場における対抗勢力の追い上げがある。レノボは、この厳しい激戦市場で「新規参入メーカーが入り込む余地はない」と、ハイアールの動きをけん制する。

 しかし、このレノボとはまったく対照的な路線でパソコン市場の攻略を図っているのがハイアールだ。同社は、すでにフランス、オーストラリア市場に自社ブランドのノートパソコンを輸出している。中国で「走出去(海外進出)」のパイオニアとされる同社は、白物家電で培ってきた海外市場戦略をパソコン分野でもフルに発揮。海外市場から中国市場を囲い込む作戦に出る。海外に出たくても出ることができないレノボには、当然ながら焦燥感が募る。

 また、中国市場でのハイアールブランドの影響力も無視できない要因だ。同社は「中国で最も尊敬される企業」に3年連続で選出されている。上海サーチナが、03年12月に行ったパソコン調査では、国内メーカーの支持率でハイアールは新参者ながら3位にランクイン。消費者市場でのブランド人気、信頼度は、ライバルにとって脅威となる。海外大手メーカーにとっても今後は無視できない存在となることは確かなようだ。いずれにせよ、ハイアールの本格参入で、中国パソコン市場はいっそう激しさを増すことになるだろう。(サーチナ・吉田雅史)
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