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中国、携帯市場に変化 海外メーカー参入可能に 競争はさらに激化へ

2004/07/26 21:03

週刊BCN 2004年07月26日vol.1049掲載

 加入件数が3億を突破した中国の携帯電話市場で、固く閉ざされてきた市場の門戸が開放されようとしている。中国政府は、端末生産市場への参入規制を緩和する方針を固めた。参入を狙ってきたメーカーにとっては待ち望んだ吉報。今後は競争激化が予想されるとともに、市場構造に大きな変化が起きることになりそうだ。

 中国国務院が発表した最新の「投資項目の行政許可に関する決定」によれば、認可制度が保留される通信・電子業界の中で「移動体通信類の製品は除外」と明記されているという。これは、携帯電話市場への自由な参入が許可されることを意味する。

 遡ると、中国では1998年に政府が公布した「移動体通信産業の発展に関する若干の意見(5号文件)」によって、生産許可証を獲得した端末メーカー以外の生産市場参入は規制されてきた。この「5号文件」では、端末の輸出入に関しても細かく規定。輸出面では、外資系メーカーが中国で生産した端末は60%以上を輸出に回さなければならないと定められている。実質的には、政府が国産ブランドのシェアを確保するために打ち出した手厚い保護政策だ。

 この政府のバックアップにより、中国ブランドはシェアを拡大させてきた。しかし、国産ブランドの保護という名のもとで、中国メーカーの新規参入も阻まれてきたことは事実だ。許可証をもたないメーカーが参入するには、買収もしくは許可証を借りる形での合弁生産しか道は残されていない。

 中国のパソコン最大手メーカーである聯想(レノボ)は、02年に許可証を有する厦華電子と合弁する形で市場参入を果たしている。しかし、このM&A(合併・買収)に代表されるように、参入できるのはレノボのような豊富な資金を有した大企業に限定される。その莫大な対価が大きな障壁となり、多くの中国メーカーにとって、事実上参入の道は閉ざされてきた。

 また、政策によってシェアを伸ばした国産ブランドは一部に過ぎず、許可証を有しながらも厳しい市場の中で競争力を失う中国メーカーの数は少なくない。この生産市場の環境悪化と、急成長を続ける中国の携帯電話市場の魅力が、開放を求める国内外メーカーの声を強力に後押しする形となっている。

 政府が生産許可証発行を解禁するとの噂はこれまでも幾度となく流れている。しかし、その度に情報産業部が否定のコメントを発表、メーカーの失望を招いてきた。しかし、今回は国務院によって明文化されたことで、これまでとは違う期待感が生まれている。

 その一方で、懸念の声も出ている。現在、国内メーカーとしてシェアトップの波導(バード)は、「熾烈な市場競争に火を注ぐようなもの。市場環境はさらに悪化する」との見方を示す。

 白熱する市場にあって、メーカーの生産過剰は深刻な問題だ。過去6か月間で、中国の携帯市場では288種の新機種が発売された。そして、この大半を中国ブランドが占めているという。この在庫圧力に加えて、海外メーカーが新規参入するとなれば、保持されてきた市場の均衡が崩れる可能性は高い。

 こうしたリスクの中で、「今回の決定は生産許可証の即刻失効を意味するものではない。参入のハードルを一段階下げることに過ぎない」(業界関係者)というように、中国政府は慎重な姿勢で開放を進めていくことが予測されている。

 情報産業部は現在、29のGSM許可証と20のCDMA許可証を発行している(このうちGSMとCDMAの両方の許可証をもっているメーカーは14社)。日系メーカーで単独の許可証をもっているのは松下電器産業、NEC、京セラ、さらにソニー・エリクソンを加えた4社。その他、東芝、三菱電機、三洋電機などは合弁展開となる。規制が緩和されれば、合弁メーカーにとっては、単独での参入も可能となる。情報産業部によれば、国内外メーカー20社がすでに許可証発行の申請を行っている。企業名は明らかにされていないものの、その中には日本メーカーの名前もあるという。

 段階的ではあるものの、中国政府が携帯市場の政策転換に出たことは確かである。今後、3G展開などを視野に入れれば、海外メーカーを中心として開放への圧力はさらに高まることが予想される。また、その中でさらに激しい競争が生まれることになりそうだ。(サーチナ・吉田雅史)
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