ニュース

SEC 次世代アーキテクチャの研究に着手 研究リソースを倍増

2004/10/25 21:11

週刊BCN 2004年10月25日vol.1061掲載

 情報処理推進機構(IPA、藤原武平太理事長)ソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC、鶴保征城所長)は、2005年度以降、研究人員など研究リソースを同センター外部のリソースも含めて2-3倍に拡大し、次世代アーキテクチャの研究に着手する。来年度のSECの予算要求額は約28億円で、このうち約3分の2を次世代アーキテクチャをはじめとする研究費に割り当てる方針だ。

 SECはソフトウェア領域で日本発のデファクトスタンダード(事実上の標準)を打ち出すことを目的に、情報システムの基盤となる次世代アーキテクチャの研究に05年度以降着手する。コンピュータの頭脳であるLSI(大規模集積回路)がさまざまなデバイスに組み込まれ、いつでもどこでもネットワークに接続できるユビキタス社会を実現するには、これら無尽蔵に増え続けるLSIを制御する大規模なアーキテクチャの確立が不可欠とされる。

 SECでは、こうしたユビキタス社会を支える次世代アーキテクチャを研究し、日本発のアーキテクチャとして世界のデファクトスタンダードに育てる。ユビキタス時代においても、引き続き日本のIT産業が有利な立場で世界をリードできる基礎固めをすることで、世界最先端のIT国家づくりを目指すe-Japan戦略を実現させる。

 今年度のSECの研究員は約30人体制で、「この人数では、既存の研究課題を解決するので手一杯」(SECの鶴保所長)であることから、来年度以降、研究員の研究パワーをSEC内外のリソースを含めて2-3倍に増やす。今年度の研究課題は、エンタープライズ系ソフトウェア開発力強化や組み込みソフトウェア開発力強化、先進ソフトウェア開発プロジェクトなどを柱に位置づけている。

 鶴保所長は、「OS(基本ソフト)やデータベースといった小さな区分ではなく、ユビキタス社会全体を設計するうえで欠かせないアーキテクチャを打ち立てる必要がある」と、個別の製品ベースの研究ではなく、情報化社会全体を網羅する次世代アーキテクチャが求められていると話す。

 今年度の研究においても、SECの外部の研究員として産業界や大学などから優秀な人材を外部の委員として約120人招いて研究リソースを確保している。来年度以降も、産業界や学界、政府機関など産官学の研究リソースをフルに活用し、次世代アーキテクチャの研究リソースの確保に努める。産業界は、最先端の研究活動に自ら参加することで、将来進むべき方向性を見極めるうえで重要な情報源を得られるメリットがある。

 こうした緩やかな共同研究体制は、「すでにLinuxなどオープンソースソフトの開発で実績がある」(鶴保所長)と、単純に研究員の人数を増やしたり、莫大な予算を投じるだけではうまくいかないと話す。必要な研究リソースを産官学から柔軟に得ていくことで、生産性の高い研究体制を築き上げる。

 来年度のSECの予算要求額は約28億円。このうち約3分の2が次世代アーキテクチャをはじめとするさまざまな研究費として割り当てられ、約3分の1が先進的なソフトウェアを開発するプロジェクトなどに割り当てられる見通し。
  • 1