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韓国IT最新事情 個人情報漏えいが深刻化 過度の住民登録番号利用も一因

2004/11/01 21:15

週刊BCN 2004年11月01日vol.1062掲載

【ソウル発】すべてを手軽なインターネット中心にしようとしすぎてしまい、今、韓国ではネットでの個人情報漏えいが深刻な状況に陥っている。ウイルスやシステムの問題ではなく、ウェブ管理者の個人情報を守ろうとする意識がほとんどないというところが問題だ。

 個人情報の扱いについて、民間企業はまだそれなりに気をつけている方だが、公社や公共機関の場合、社員名簿や入社試験合格者の氏名から住民登録番号、住所、携帯番号、学歴、写真までサイトの掲示板に何の保護措置もなく掲載したり、ウェブサーバーにファイルを放置したまま検索エンジンにひっかかっても気づかなかったり、個人情報を慎重に扱わないところが多い。

 韓国情報保護振興院が運営する個人情報侵害届出センター「1336」に電話しても、該当サイトの担当者に削除するよう警告するだけで、それによる被害についてはどこも相談に乗ってくれないというのが現実だ。個人の識別番号である住民登録番号を盗用され被害にあったとしても、その掲示板が原因であったと証明するのは難しい。

 韓国ではネットの会員登録、金融、携帯電話など、どんな取り引きにも住民登録番号が絶対必要である。これを盗用され、「誰かが勝手に作ったクレジットカードと携帯電話の数10万円に及ぶ請求書に腰を抜かした」という話をよく聞く。犯人が捕まるまで、会社側は金融データベースから住民登録番号で本人の住所を割り出し、請求の取り立てを止めないので、盗用された個人の経済的、心理的負担は深刻なものである。

 韓国の個人情報保護関連の法律は、「公共機関の個人情報保護に関する法律」(行政自治部)、(民間の)「情報通信網利用促進及び情報保護などに関する法律」(情報通信省)、「信用情報の利用及び保護に関する法律」(金融監督院)の3つに分かれ、管轄が異なる。

 これを改善しようと、独立した個人情報監督機構設立による行政自治部と情報通信部の業務分担と関連機関の再編を中心にした個人情報保護基本法(案)制定が推進されている。しかし、1つの監督機構が責任を持って取り締れるようにするべきとの意見が多く、基本法がスムーズに制定されるかどうかは未知数である。

 また、市民団体は個人情報流出による集団訴訟制度導入と40年以上も放置されたままの住民登録法、何にでも住民登録番号を要求すること自体を改善すべきであると主張している。

 「国民総背番号制」により、利用料を携帯電話料金に合算請求する「小額決済」が活性化され、コンテンツの有料化が成功したとも言われているが、番号に依存しすぎる国民管理と個人情報の大切さを知らない公務員の意識が改善されない限り、ネットの個人情報漏れは続くだろう。これは韓国だけの問題ではないはずだ。(趙章恩(チョウ・チャンウン=ITジャーナリスト))
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