米マイクロソフトが受託製造業者フレクトロニクスと提携、携帯電話中位機種市場に自ら乗り出した。またその一方で、携帯電話最大手ノキアとも提携。ノキアの上位機種に音楽再生などの各種機能を搭載していくという。片手に武器を持ち、片手で握手する。パソコン市場での神通力が効かない携帯電話機市場で、マイクロソフトの戦略は巧妙化し始めた。

 マイクロソフトは、シンガポールに拠点を持つ委託製造業者のフレクトロニクスと提携、マイクロソフト製モバイル機器向けOS「モバイル2003セカンドエディション」を搭載した廉価版スマートフォンを製造すると発表した。

 製造されるスマートフォンは、開発コード名「Peabody(ピーボディ)」と呼ばれるプラットホームを採用。ピーボディはブルートゥース機能、ショートレンジのワイヤレスオプション、1.9インチのカラーディスプレイを搭載、GSM、GPRS、EDGEの通信環境で利用できる。

 またピーボディには音楽再生や電子メール、連絡先、予定表など1万8000ものアプリケーションが用意されており、製造ラインを微調整するだけで好みの仕様の製品を少量から比較的簡単に製造できる。セキュリティの高いビジネスユースから音楽、ゲームなどの娯楽重視の用途まで、さまざま携帯電話機を同じプラットホームを利用して製造できるわけだ。

 携帯電話機に対する消費者ニーズの多様化は進んでいる。どれだけ多くの機種を効率よく取り揃えられるかが、携帯電話機メーカーや携帯電話事業者の課題になっている。マイクロソフトは、ピーボディをこうしたメーカーや事業者に納入していく考え。特に日本以外の市場では、中位機種市場の爆発的な拡大が期待されており、ウィンドウズとの親和性を武器に攻勢をかける構えだ。

 フレクトロニクスはマイクロソフト製ゲーム機「Xbox」の製造を請け負うなどの実績を持っている。

 その一方で、マイクロソフトは携帯電話機向けOS市場でこれまで激しく競合してきたノキアとこのほど提携した。音楽再生ソフトのウィンドウズメディアプレーヤーと著作権保護技術をノキアの携帯電話に搭載していくという。ノキアはこれまで、自社開発の再生ソフトとリアルネットワークス社の再生ソフトを使っていた。

 ノキアはまた、マイクロソフトのエクスチェンジサーバーのアクティブシンク機能を利用して、電子メール、予定表、連絡先などのデータの同期も可能にするという。ただマイクロソフトのOSの搭載予定はないとしている。

 ノキアがマイクロソフト技術を採用する見返りに、マイクロソフトは音楽圧縮技術と著作権保護技術にオープンスタンダードを取り入れていくという。

 携帯電話の高機能化が進むなかで、携帯電話とパソコンとの連携プレーの需要が高まっており、ノキアとしてもマイクロソフトと提携せざると得なくなったもようだ。ソニー・エリクソン・モバイル・コミュニケーションズは「ソニーウォークマン」ブランドの携帯電話の開発を発表。ノキアはソニー・エリクソンに対抗する意味でも、マイクロソフトと手を組むことで音楽配信、音楽再生機能を搭載した携帯電話に力を入れたいというところだろう。

 ちなみにウォークマン携帯電話は、現在市販の携帯電話より記憶容量を大幅に拡大、高性能イヤホンを装備し、パソコンなどから音楽ファイルの転送が簡単にできるよう工夫されるという。発売は今年下期を予定。仏カンヌで開かれた第3世代携帯電話の見本市「3GSMワールドコングレス」で発表した。

 ノキアは明らかにアライアンス重視の戦略に転換したもようで、このほかにも携帯電話事業者との共同ブランドの電話機も手掛けていくという。

 マイクロソフトにとって、5年前に携帯電話機向けOSを発表して以来、ノキアおよびノキアが推進するシンビアンとシェア争いを続けてきたものの、パソコンOS市場のように1社で独占するのは非常に困難だ。IT業界の主戦場が携帯電話やデジタル家電に移行するなか、これまでのような強気の戦略では立ち行かなくなっている。協力し合うべきところと競合し合うところを見極めた戦略に移行し始めたということだろう。(湯川鶴章)