問題の解決が長期化しつつあるイラク・中東情勢を反映してか、現在米国内でのガソリン価格は高騰の一途を辿っている、自動車が生活インフラでもある米国では、ガソリン価格の高騰は深刻な影響を各方面に与えかねない。そんななか、市民団体が作ったガソリン価格比較サイトが人気だ。

 不透明なイラク情勢をはじめ、いくつもの深刻な問題が解決しない中東事情が反映してか、現在米国内ではガソリン価格の高騰が続いている。米国内でのガソリン価格は、州やエリアの特性などに大きく影響されることもあり、これまでは全米を対象にした価格協定や出荷調整などは行われることはまれだった。しかしブッシュ大統領再選後も状況が好転しないままであることから、価格の高騰に業を煮やした消費者は、それぞれの手段で自衛策を模索し始め、遂に実行に移すことになった。

 ガスバディ・ドットコム(http://www.gasbuddy.com/)は、ボランティアの協力により成り立つサイトだ。ガスバディには30万人近いボランティアが参加し、全米各地(カナダの一部を含む)のガソリンスタンドでの販売価格を報告している。ガソリン価格が最も高騰した2004年8月には、サイトの月間アクセス数は200万件に達した。消費者の注目度の高さが伺える。

 サイトの管理者はミネソタ州に住むプログラマー。現在の資金提供者である知人の歯科医との雑談からこのサイトのアイディアが生まれたという。

 一方ガスプライスウォッチ(http://www.gaspricewatch.com/)は営利サイトとして経営されている。経費はスポンサーからの広告出稿と閲覧者に対する有料の情報提供で賄い、コンテンツである各地のガソリン価格はやはりボランティアからの情報に頼っている。

 かつてプライスライン・ドットコムもこの分野に進出し、結果として失敗に終わったのは有名だ。プライスラインは航空券を手始めに、逆オークションで業界の話題をさらったが、他分野への進出はことごとく失敗に終わっている。基盤であった旅行分野も、現在では専門企業の進出によりいささか厳しい立場にさらされている。そんななか、ガスバディやガスプライスウォッチが成功を収めつつあるのにはいくつか理由がある。

 米国市民の多くは、現在のガソリン価格高騰が業界のカルテルによって引き起こされていると感じている。また、生活必需品であることから購入を控えることもできず、常に価格に不満を持ちながら購入している。プライスラインの例と違い、ガスバディもガスプライスウォッチも情報源が一般市民なので、数字の信頼性や鮮度への期待が高いことが挙げられる。

 これらのサイトが発信する情報は、ボランティアに頼っている。そのため、情報更新の頻度は統一性がなく、実際には役に立たないことも多いとの意見もある。またガスプライスウォッチは広告収入によっても運営されており、広告主の意向に左右される危惧もある。いずれもこの種のサイトのデファクト・スタンダート(事実上の業界標準)になるにはもう少し時間がかかるだろう。事実、ガスプライスウォッチはガソリン卸売業者と提携しており、情報の信頼度への不安感も不思議ではない。

 石油大手をはじめ、ガソリンスタンドチェーン、そしてアナリストたちはこれらのサイトの活動そのものに疑問を投げかける。ガソリン価格は単一的な要素(需要と供給)よって決まる物ではなく、他の産業の動向や自動車販売量の増減、さらには米国の国内総生産(GDP)や市民の所得額など、いくつもの複雑な要因が絡み合って算出される物である、というのがその理由だ。単に安いか高いかだけで判断し、安い販売店に消費者が集中すれば、結果としてあっという間にその販売拠点も値上げに踏み切らざるを得ない。

 生活必需品であるからこそ厳しい目が向けられるガソリンだが、消費者のこうした活動が価格に直接反映するほど問題は簡単ではないようだ。米国では多くの業界が草の的な市民団体の積極的な活動によって大きく方向転換を強いられた事実があるが、石油業界がその道をたどるかどうか見極めるには、今しばらく時間がかかりそうである。(田中秀憲)